研究課題/領域番号 |
20K15343
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
徐 于懿 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10757678)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポリ-γ-グルタミン酸 / ハイドロゲル / 酵素架橋 / ディールスアルダー反応 / デュアル刺激応答性 |
研究実績の概要 |
納豆由来の生分解性高分子ポリ-γ-グルタミン酸(PGA)をベースとしたハイドロゲルは、ポリマー治療や再生医療に応用することが研究されている。臨床応用のために、迅速な注入時間と制御可能なゲル強度を備えた新規デュアル刺激応答性PGAハイドロゲルを設計することが必要となる。本研究では生体応用できる刺激応答性ハイドロゲルを創出するため、主基材としてPGAを選択し、その側鎖に機能団を導入する。異なる機能団を導入することにより、デュアル刺激応答性ハイドロゲル前駆体は異なる環境に応じてゲル化できるため、生体内で応用しやすい温度応答性と酵素応答性を利用する。温度応答性と酵素反応により瞬時ゲル化でき、ハイドロゲルの機械的強度を制御できるように設計する。このようなデュアル刺激応答性ハイドロゲルの前駆体構造や硬化条件を変えることでゲル強度を自在に制御し、広範囲に利用できるインジェクタブル細胞スキャホールドへの応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、新規デュアル刺激応答性PGAハイドロゲルを作製するため、PGA側鎖にフルフリルアミン(Fa)およびチラミン(Tyr)と反応させ、フルフリル基とフェノール基機能団を導入してPGA-Fa-Tyrを合成した。さらに、架橋剤ジマレイミドポリ(エチレングリコール)(MAL-PEG-MAL)を使用して、温度応答性や酵素応答性を搭載したPGAハイドロゲルを作製した。Tyrと西洋わさびペルオキシダーゼ(Horseradish Peroxidase; HRP)を用いて酵素架橋(Eny)が形成し、FAとMAL-PEG-MALのディールスアルダー反応(DA)により温度応答でき、デュアル刺激応答性ハイドロゲルは迅速にゲル化することができ、ゲル化時間は過酸化水素(H2O2)濃度を変えることによって10から95秒の範囲で制御することができた。その後、ハイドロゲルのDA反応の進行とともに、ゲルの圧縮応力およびひずみは著しく増強され、単一のEnyによって形成されたハイドロゲルより増大していることが分かった。さらに、注射可能なハイドロゲルの機械的強度、膨潤比、細孔サイズ、および分解挙動は、H2O2 / Tyrまたはフラン/マレイミドのモル比を変えることによって容易に制御することができることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、まずはプロテイナーゼKを用いて、In vitro分解挙動を評価する。また、ウシ血清アルブミンを使用して、デュアル刺激応答性PGAハイドロゲルの蛋白質徐放挙動を評価する。さらに、開発したPGAハイドロゲルの細胞マトリックスとしての適合性を評価するため、(1)や(2)で作製した異なる機械強度のハイドロゲルに細胞を播種して増殖させる。弾性率100 Paのハイドロゲルに神経細胞、1000 Paに内皮細胞、10000 Paに骨芽細胞を播種し、細胞毒性を評価するとともに、細胞の増殖性、伸展性を評価する。その後、開発したPGA前駆体のインジェクション適合性を細胞存在下に調べる。開発された新規デュアル刺激応答性PGAハイドロゲルは、組織工学や細胞/薬物送達などの生物医学分野での応用できるように目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
部品費の一部は見積より低価格で購入できたため、残額が生じて次年度に使用します。
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