研究課題/領域番号 |
20K15344
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中畑 雅樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40755641)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ムチン / ボロン酸 / ハイブリッド材料 / ヒドロゲル / バイオ医薬品 |
研究実績の概要 |
本年度は、申請時の一年目の研究計画に記載した①「ムチン-合成高分子ハイブリッド材料の開発」②「力学特性のチューニング」③「分解性の評価」について主に研究を進めた。①については、ムチン側鎖の糖鎖と相互作用しうるボロン酸部位を合成高分子に組み込むという材料設計のもと、(A)ムチンとボロン酸含有ポリマーの溶液中での混合、もしくは(B)ムチン共存下でのモノマーの重合、という二種類の方法によってそれぞれヒドロゲルを得ることができた。②については、合成高分子へのボロン酸部位の導入率に応じて得られるヒドロゲルの力学特性を変調することが可能であることが明らかになった。また③に関して、手法(A)によって形成したヒドロゲルは、細胞培養用培地中といったマイルドな条件下で徐々にゾル化し、ゲルを分解できることが分かった。ボロン酸の導入率に応じて分解性をある程度制御することもでき、本研究に用いる材料設計の指針を確立することができた。これにより、次年度の計画に向けての基盤材料が整ったといえる。得られた研究成果は、研究代表者および研究に携わる学生が国内学会にて発表した。また今年度の成果をまとめた論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記載のように、全体の研究計画のコアになる部分である基盤材料の開発は本年度の研究の中で達成することができた。次年度は、当初予定していたように、本材料を用いたバイオ医薬品への応用を進めていく予定である。全体として、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討より、ムチンとボロン酸の相互作用を利用したマイルドな条件でのヒドロゲル形成・使用・分解が可能であることを示すことができたため、次年度はこれを応用し、バイオ医薬品のキャリアとして応用する検討へと進む。本年度に開発したヒドロゲルの一部は、生きた細胞や菌の共存下でも形成・分解が可能であった。この思いがけない発見を活かして次年度は、当初計画にて想定していたタンパク質医薬品などの非生物医薬品に加え、細胞医薬品やヘルスケアに資するプロバイオティクスなど、さらにバイオ医薬品の適用対象を拡げた検討も視野に入れて検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:本研究課題の申請後、コロナ禍により予定していた出張が全てオンラインかキャンセルとなり、旅費への支出が少なくなった。また緊急事態宣言中は大学での実験を中止することを余儀なくされたため、本年度の実際の使用額は予定していた額に至らなかった。 使用計画:本年度で材料の開発を行ったため、次年度に材料の力学特性を精密に測定するための機器の導入を計画している。またこれに加え、成果発表のための経費、研究で必要になる消耗品の購入のために次年度配分予算と合わせて計画的に使用する予定である。
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