研究課題/領域番号 |
20K15348
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
田仲 玲奈 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (00813510)
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研究期間 (年度) |
2021-02-01 – 2024-03-31
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キーワード | セルロースナノファイバー / 粘弾性 / 複屈折 / 緩和 |
研究実績の概要 |
本年度は課題①「レオロジー測定によるCNFの緩和挙動の解明」に重点的に取り組んだ。サンプルとして、平均長が約300nm、幅が約3nmの孤立分散したセルロースナノファイバー(CNF)を用いた。希薄~準希薄域のCNF/グリセリン分散液を動的粘弾性および複屈折測定に供し、半屈曲高分子の粘弾性理論との比較により、CNFの緩和機構の解明を目指した。 CNFの複屈折緩和は、棒状のセルロースナノクリスタル(CNC)と異なり、剛直棒の回転運動だけでなく、曲げに由来する緩和を示した。また準希薄域でのCNFは、濃度がわずかに上昇するだけでCNF同士の相互作用が増し、回転緩和時間が遅延した。 CNFの粘弾性緩和はCNCと異なり、既存の半屈曲性高分子の粘弾性理論だけでは記述することができなかった。この原因は未解明だが、引張や曲げ以外の内部運動に由来する緩和に起因すると考えられる。現在CNFのサイズや分散媒を変えて粘弾性・複屈折測定を行い、この原因を検討中である。 課題②「蛍光顕微鏡法によるCNFの緩和挙動の解明」については、CNFを液中で蛍光ラベル化できる染料を発見した。蛍光ラベル化の顕微鏡観察は来年度に実施する。 上記の課題に加えて、希薄域におけるCNFのレオロジー特性に関する招待総説を、日本レオロジー学会誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CNFの粘弾性緩和が想定以上に複雑で、全体像を解明するのに追加の実験が必要であり時間がかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
課題①「レオロジー測定によるCNFの緩和機構の解明」については、サイズの異なるCNFや多種の分散媒を用いて追加の粘弾性・複屈折測定を行い、CNFの緩和機構の解明を目指す。課題②「蛍光顕微鏡法によるCNFの緩和機構の解明」については、蛍光ラベル化したCNFの顕微鏡観察を行い、緩和時間の評価を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
課題①「レオロジー測定によるCNFの緩和挙動の解明」に想定以上の実験が必要となり、本年度はレオロジー測定を重点的に行った。従って、課題②「蛍光顕微鏡法によるCNFの緩和挙動の解明」にあまり時間を割くことができず、本年度中に蛍光顕微鏡観察まで至らなかったため、購入予定であった冷却CCDカメラを購入しなかった。本カメラは来年度に購入予定であり、加えて人件費に使用する予定である。
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