研究課題
我々の身の回りで日常的に使われる有機材料や複合材料の設計戦略は概して「引力的相互作用」に基づいている。例えば、分子や高分子間の化学結合や構成要素間に働く引力的相互作用を適切にデザインすることによって、様々な機能や優れた力学物性を有する材料が作製されている。一方、これと対をなす概念は「斥力的相互作用」であるが、特に「静電斥力」と「磁気斥力」はその合理的設計と制御の難しさから、長年、材料科学分野で戦略的に利用されてこなかった。本研究では「磁気斥力」の概念をソフトマテリアルの材料設計に導入し、高強度化された機能性ソフトマテリアルの創成を目指した。最終年度は主に、「磁気斥力」を生み出すためのビルディングブロックの配列方法について検討を行った。「磁気斥力」を生み出すためには、磁石のS極同士、あるいは、N極同士を向き合う形にしてソフトマテリアルに内包する必要があるが、自発的にはS極とN極が引き合うためにこのようなジオメトリを実現するのは困難である。そこで、トップダウン的に扱いが容易なサイズスケールの磁石を利用することで、磁石の同極同士を向き合わせてハイドロゲル中に埋め込むことに成功した。得られたハイドロゲルは磁気斥力を内包しないハイドロゲルと比較してより高い力学物性を示すことが明らかになった。研究期間全体を通して、磁気斥力を生み出すためのビルディングブロックの探索と磁気斥力を内包したソフトマテリアルの作製を行なった。本研究で得られた成果は、今まで材料科学分野で積極的に利用されてこなかった「磁気斥力」を活用するための指針となることが期待される。
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Nature Communications
巻: 12 ページ: 6771
10.1038/s41467-021-26917-1