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2020 年度 実施状況報告書

分子性物質におけるフォノン解析に基づく熱輸送-電荷輸送相関の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K15353
研究機関舞鶴工業高等専門学校

研究代表者

小島 広孝  舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (70713634)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードフォノン解析 / 熱輸送 / 電荷輸送 / 有機熱電材料
研究実績の概要

本課題では,近年研究が進められている有機熱電変換材料において,熱的特性や熱電特性に重要な分子振動やフォノンに関して,量子化学計算や分子振動解析等を検討する。フォノンの群速度や緩和時間等を解析し,熱伝導や電気伝導に寄与するフォノンの特定や,分子構造などと照らし合わせることで構造物性相関を得る予定である。
今年度は,本課題に先行して別課題として実施されている実験研究に進展があったため,それに関連する計算研究と,計算条件等の整備に終始した。以前に検討されたジベンゾクリセン(DBC)に関連し,DBC誘導体の熱電特性が測定された。メチル基を導入したジメチルジベンゾクリセンと,末端水素を重水素で置換した重水素化ジベンゾクリセンについて,これらは結晶構造のモチーフが大きく変わることなく,分子間の距離のみが異なる。それぞれの単結晶に対して熱電特性が測定され,メチル置換体では無置換体と比較して主に電気伝導率が増加する傾向が見られ,重水素化体では主にゼーベック係数が増加する傾向が見られた。これらの違いを比較するため,各結晶構造に基づいて分子間距離を見積り,分子間にはたらくトランスファー積分を計算した。その結果,メチル置換体(3.91Å)は無置換体(3.8Å)より長く,重水素化体(3.77Å)は無置換体より短いことが分かった。一方,トランスファー積分は,重水素化体と無置換体で大差がなく,メチル置換体のみが有意に減少した。これは結晶構造のモチーフは保持されているものの,置換基によって分子カラムが横ずれしている影響と見られる。これらのうち重水素化体のみが著しく大きなゼーベック係数を示すことが実験から判明した。質量の大きい重水素によって,分子振動が変調されている影響の可能性が示唆される。これまで重水素を含む系に対して分子振動解析を行った実績はないため,必要な計算条件やパラメータについて現在集約している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

研究代表者の所属が変更されたため,授業準備や学校業務などのエフォートが急増した。さらに新型コロナウイルス感染症への対策と重なったため,想定外の雑務も多く発生した。また,研究設備の移設および新設に時間を要したため,研究の再開が遅れた。新設したコンピュータには納品時からハードウェア上のトラブルが発生し,長期間にわたる業者対応の必要が生じたため,設備の使用に支障が生じている。これらの複数の影響を受けたため,関連する研究について進捗はあるものの,本研究課題で焦点にしている計算研究については当初計画よりも進捗に遅れが発生している。

今後の研究の推進方策

先行する上記の実験研究から,計算対象として適した系が見つかっている。特に重水素化体に関しては,従来の材料系と比べて,優れた熱電特性を示す可能性の兆しが見られており,計算研究でも扱うことのできる最適な系として注目している。すでに予備的な計算研究において,重水素化体のフォノン解析例は実施しており,これを本系に応用して適用することで,実験研究で得られた結果と突き合わせる理論的考察についてまずは行う。
一方で,分子動力学計算における重水素化体の計算実績の蓄積は十分とは言えないため,必要な計算条件やパラメータについて取り急ぎ集約した後に,本計算に着手する。今回の実験研究によって無置換体(通常の水素置換体)と重水素化体の同条件での実験結果が得られているため,計算研究においても有意な比較検討が可能になったと位置づけている。
移設および新設した計算設備については,未だにセットアップが完全には終了しておらず,業者対応を依頼している最中である。これらが完了次第,計算研究を開始し,ここまでの遅れを取り戻す予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究代表者の所属が変更され,研究環境が大きく変化したことにより,研究を推進するために必要となる物品に変更が生じた。
また,新型コロナウイルス感染症への対策を理由に,当初予定していた国内外の学会への参加が見送られたため,旅費等については次年度以降に持ち越すこととした。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Evaluating Computational Shortcuts in Supercell-Based Phonon Calculations of Molecular Crystals: The Instructive Case of Naphthalene2020

    • 著者名/発表者名
      Kamencek Tomas、Wieser Sandro、Kojima Hirotaka、Bedoya-Martinez Natalia、Durholt Johannes P.、Schmid Rochus、Zojer Egbert
    • 雑誌名

      Journal of Chemical Theory and Computation

      巻: 16 ページ: 2716~2735

    • DOI

      10.1021/acs.jctc.0c00119

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Evaluating Computational Shortcuts in Supercell-Based Phonon Calculations of Molecular Crystals: The Instructive Case of Naphthalene2021

    • 著者名/発表者名
      Tomas Kamencek, Sandro Wieser, Hirotaka Kojima, Natalia Bedoya-Martinez, Johannes P. Durholt, Rochus Schmid, Egbert Zojer
    • 学会等名
      APS March Meeting 2021
    • 国際学会
  • [学会発表] π共役曲面をもつジベンゾクリセンにおける巨大ゼーベック効果2020

    • 著者名/発表者名
      川内暁貴,小嶋晃平,阿部竜,小島広孝,辨天宏明,辻 勇人,大井綾子,山岸正和,中村雅一
    • 学会等名
      第81回応用物理学会秋季学術講演会

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公開日: 2021-12-27  

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