研究課題/領域番号 |
20K15353
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研究機関 | 舞鶴工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小島 広孝 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (70713634)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フォノン解析 / 熱輸送 / 分子動力学計算 / 電荷輸送 / 有機熱電材料 |
研究実績の概要 |
本課題では,近年研究が進められている有機熱電変換材料において,熱的特性や熱電特性に重要な分子振動やフォノンに関して,量子化学計算や分子振動解析等を検討する。フォノンの群速度や緩和時間等を解析し,熱伝導や電気伝導に寄与するフォノンの特定や,分子構造などと照らし合わせることで構造物性相関を得る予定である。 今年度は,本課題で用いる計画であった計算手法の一つである分子動力学(MD)シミュレーションにおいて一定の進展があった。本課題の予備実験として以前に行われた計算機実験では,本課題で対象としている有機単結晶構造において,スケール依存性の検討の必要性が示唆されていた。これまで計算設備等の都合上,現実的に実行することのできる計算のスケールは限定されていたため,セルサイズの小さい周期構造の系を計算対象に設定せざるを得なかったが,計算環境の再構築を行うことで,大規模計算を難なく実施できる環境を獲得した。現在までに数万原子程度の系については問題なく計算を実施できることを確認している。この計算手法を用いて,これまでの計算結果とも矛盾がないことや,計算パラメータの見直しなどを行った。その結果,昨年度に進展がみられていた重水素化化合物などの一部の系に関しては,残念ながら計算条件の再検討が余儀なくされることが判明した。 また,共同研究などを通じて実験研究に必要な試料をハンドリングできるよう最低限の設備を整えた。計算研究と併せて,共同研究などを通じて本課題を加速させるために必要な研究環境が整備できたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の校務分掌が変更され,学級担任を務めることになったため,担任業務などのエフォートが急増した。さらに昨年度に引き続き,新型コロナウイルス感染症への対策などの想定外の雑務も多く発生するなどが原因で,研究の進展には依然として一定の遅れが発生している。研究環境に関しては,昨年度発生していたコンピュータのハードウェア上のトラブルについてはおおむね解消した。今年度は研究設備の再構築を実施し,先行研究などとの妥当性の評価はおおむね完了しており,今後の研究への展望が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
研究設備の再構築がほぼ完了したため,本課題で当初より計算対象としていた系へのアプローチが実施できる環境がようやく整った。別課題として実施されている実験研究にも進展が見られており,有望と思われる種々の系に関して計算研究を実施できる算段が立ったと考える。重水素置換化合物などの一部の系に関してはすでに取り組み,残念ながら計算条件の再検討が必要な系であることが判明したものもある。直近に着手を予定している計画として,計算設備の更新に伴うフォノン解析手法の再構築が挙げられる。今年度に再構築が完了した分子動力学計算と併せて多角的な研究アプローチを実施するためには欠かせない手法であるため,フォノン解析の計算資源の増強と手法の再構築を優先して行う。また,共同研究などを通じて実験研究に必要な試料をハンドリングできるよう最低限の研究設備が整ったため,本課題を加速させるための共同研究なども積極的に取り入れたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究などを通じて実験研究に必要な試料をハンドリングできるよう最低限の設備を整えた。急遽揃えたために必要物品の選定が未だ完了しておらず,一部は次年度に持ち越すこととした。また,新型コロナウイルス感染症の発生を理由に,当初予定していた国内外の学会への参加が見送られたため,旅費等については次年度に持ち越すこととした。
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