本研究では、有機薄膜太陽電池の高効率化を指向した新規のn型低分子材料開発を行った。n型低分子材料は中心のラダー型骨格とその末端に電子吸引基が置換した構造を有している。本研究では中心に用いるラダー型骨格の開発に取り組んでおり、特にナフトビスチアジアゾール骨格を基調としたラダー型骨格の開発およびそれを中心に用いたn型低分子材料の合成、物性評価、太陽電池デバイス特性の調査を実施した。 R2年度は側鎖や末端骨格の異なる材料TT1-TT4を開発し、物性評価したところ、吸収波長が約850 nm程度までありLUMO準位は約3.9 eVとこれまでに報告されているn型材料と同程度の吸収帯とエネルギー準位を有することが明らかとなった。太陽電池素子の評価を様々なp型半導体ポリマーを用いて行ったところ、ベンゾビスチアゾールとベンゾジチオフェンからなるポリマーとの素子で10%を超える光電変換効率を示すことが明らかとなった。また、これらの太陽電池素子のX線回折測定から結晶性を評価したところn型材料の結晶性が高い方が高効率を示すことが明らかとなった。従来のn型低分子材料は、結晶性が低いものやアモルファスな材料ばかりであるため、結晶性と光電変換効率に関する議論はほとんどなされていなかったが、n型低分子材料の結晶性が高効率化に向けて重要なアプローチであることが明らかとなった。 このように比較的良好な特性を示すことが明らかとなったため、材料の大量合成を目指してより簡便な合成経路での合成検討を合わせて検討中である。
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