研究課題
高分子半導体に対して独自に開発した化学ドーピングを実施することで、5.7 eVまでの高仕事関数、3.9 eVまでの低仕事関数を実現できることを本研究において実証し、それぞれ論文発表した。高仕事関数の実現においては高分子半導体が形成するHOMOバンドから電子を引き抜き、フェルミ準位をシフトさせる効果が大きいと考えられる。また、電子の引き抜きに伴って導入するアニオン種としては、嵩高いアニオンを用いることが高仕事関数の実現に有利であることを見出した。これは、イオンと半導体中のホールが薄膜表面において形成する真空準位シフト・ダイポールも重要な役割を果たすことを示唆している。嵩高いイオンを用いてドーピングすることにより、高仕事関数・低仕事関数の導電性材料の大気安定性が向上する結果も得られている。作製した導電性材料は大気下で動作するデバイス応用も可能であり、ドーパントイオンの低吸湿性が安定性実現に重要であると考えられる。これらの結果を踏まえたデバイス応用についても最終年度に進展し、高性能なショットーダイオードの作成に成功した。縦型ダイオードは金属-半導体-金属が積層された構造をとり、これは発光素子や太陽電池素子でもよく用いられる形態である。下部電極をオーミック接合、上部電極をショットキー接合とするように、化学ドーピングされた高分子半導体等からなる下部電極上に真性半導体および上部電極を積層する技術を開発した。これにより、整流比が4桁、順方向電流値が10 A/cm2を超えるダイオードを歩留まり良く作製することに成功した。これは有機ダイオードとしては前例がない成果であり、化学ドーピングによる仕事関数制御がデバイス特性の著しい向上をもたらすことを実証した。以上の結果は整流ダイオードのみならず、縦型ダイオード構造を用いた有機光電変換素子の発展に今後貢献するものと考えられる。
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Applied Physics Letters
巻: 119 ページ: 013302
10.1063/5.0052279