| 研究課題/領域番号 |
20K15360
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| 研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
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研究代表者 |
相沢 美帆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (30849948)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 易剥離 / 分子層 / 光応答性分子 / 界面剥離 / 化学結合変化 |
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| 研究実績の概要 |
本研究は，材料の高機能化を背景として近年拡大しているマルチマテリアルの導入に伴い接着剤に求められている「易剥離機能」を高効率に発現する分子層の創製を見据えて，界面での接着-剥離様式の解明を目指す研究である。素材同士が接触している界面における接着メカニズムは未だ明らかにされておらず，現行の易剥離技術は接着剤全体の状態変化を利用している。界面での接着原理が解明されれば，より効率的な易剥離技術の開発に繋がる。そこで本研究では，「外部刺激に応じて結合状態を変化させる開裂分子層」を作製し，接着界面における共有結合の生成と解離が「素材同士の接着と剥離」に与える影響について明らかにすることを目的としている。目標達成に向けて，令和2年度は，開裂分子層の形成方法の検討と開裂分子層中での化学結合変化の評価法の確立に取り組んだ。開裂分子層を形成する化合物の合成から着手し，基板への吸着条件や光二量化反応の進行条件を検討することで，ガラス基板上に分子層を形成することに成功した。また，紫外可視吸収スペクトル測定や赤外吸収スペクトル測定等の各種分析法を用いることで，熱や光の刺激を与えた際に開裂分子層中の化学結合が変化する現象を見出した。得た結果に関して，査読付き論文発表1件および学会発表2件を実施した。さらに，当該研究成果をもとに産業財産権の出願にも至った。また，開裂分子層中における化学結合の開裂反応が接着力に与える効果についての検証に向けて，接着試験を行うための試験片の作製方法や試験法についての検討にも着手した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では，本研究の基盤技術となる「開裂分子層の形成と光二量化／開裂反応の評価」を本年度までの実施計画としていた。本年度は，当該目標を達成し研究成果発表（論文1件，学会発表2件，知的財産権出願1件）まで繋げたことに加えて，分子層中の結合変化が接着力に与える効果について検証するという次段階の研究に向けた検討にも着手したことから，当初の計画以上に進展していると考えている。具体的に本年度は，分子層を形成する化合物の合成から着手した。ガラス基板上に環式化合物の分子層を吸着させるために，加水分解性シリル基を組み込んだアントラセン化合物を合成し，基板に修飾させて単量体の分子層を形成した。その単量体層上にアントラセン化合物を積層させた状態で光照射することで，光二量化反応が進行するか調べた。このとき，積層させるアントラセン化合物の種類や光照射条件が光二量化反応の進行において重要であることを，紫外可視吸収スペクトル測定により見出し，光二量化反応により結合が形成する条件を明らかにした。開裂反応についても同様に条件検討を行った結果，加熱温度や加熱時間に応じた熱解体の進行挙動観測に至った。短波長の光による開裂反応についても検討し，形成した分子層中で光解体も進行することを明らかにした。これらの結合の形成と開裂反応の検出に紫外可視吸収スペクトル測定や赤外吸収スペクトル測定を用いたことに加えて，原子間力顕微鏡観察や接触角測定による表面物性評価についても実施し，分子層中の化学結合変化がもたらす影響について包括的に評価した。これらの内容に関して，研究成果としてまとめた。さらに，この知見をもとに，分子層中における結合開裂反応が接着力に与える効果について検討するための試験片の作製方法や接着試験方法の検討も開始している。
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| 今後の研究の推進方策 |
令和3年度は，まず作製した開裂分子層中における開裂反応が接着力に与える効果について検討することから始める。すでに試験片の作製に用いる接着剤や被着体の検討は開始しており，分子層との反応性や接着力などを勘案しながら試験片作製条件を決定する。加えて，分子層中の結合変化が与える接着力への影響評価に適した試験方法についても検討し，接着強度試験を行う。このとき，分子層中の化学結合を変化させる刺激（熱・光）を与える条件については，これまでに得た知見をもとに設定する。そのようにして開裂反応の進行に応じた力学強度の変化を調べるとともに，赤外分光光度計を用いた計測や顕微鏡観察による剥離面の詳細な解析を実施し ，分子の共有結合が接着界面においてどのように働いているのか明らかにする。令和4年度は，開裂分子層の適用範囲の拡充を視野に入れ，使用する基材や接着剤の種類に応じて選択した官能基をもつ化合物を用いて分子層を形成し，開裂反応による剥離性の評価を行う。さらに，光照射により開裂させる系での照射波長の拡充を目的として，クマリン二量体やシクロブタンジイミド系を用いた分子層形成についても検討する。これらの検討を通して分子構造や開裂反応の変化が接着性・剥離性に及ぼす影響について明らかにすることで，本研究の応用可能性を探索するとともに，接着界面からの効率的な易剥離技術の実現を目指す上で重要である界面における接着メカニズムの解析を進める。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
本年度は，新型コロナウイルスの影響により国内・国際学会の中止や延期が相次いだことで，令和２年度分の予算として計上していた旅費や学会参加費等が使用できなかったために次年度使用額が生じた。次年度使用となった予算に関しては，延期となった国際学会の参加費や国内学会の参加費・旅費等に使用する予定である。
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