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2020 年度 実施状況報告書

粉体表面におけるナノ構造のその場合成とLiLaZrO系固体電解質の低温緻密化

研究課題

研究課題/領域番号 20K15365
研究機関名古屋工業大学

研究代表者

渕上 輝顕  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20756704)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード低温焼結 / 固体電解質 / ナノ粒子 / リチウムイオン電池 / 全固体電池 / セラミックス / 焼結
研究実績の概要

本研究ではセラミックス粉体へのナノ構造導入法の確立と、ナノサイズ効果を利用した低温緻密化挙動の調査および酸化物系固体電解質の緻密体創製を目指している。今年度は液相法によるLi7La3Zr2O12固体電解質へのナノ構造導入を進めると同時に、ナノサイズのLi7La3Zr2O12固体電解質を用いることで低温焼結による緻密化が可能であるかを検証するため、トップダウン法によるナノサイズ化を行った。その結果、遊星ボールミル粉砕と炭酸リチウムとの混合焼成を組み合わせることで、粒子径60 nm程度のLi7La3Zr2O12固体電解質ナノ粒子が得られた。このナノ粒子から通常の加圧成形と固相焼結法を用いてセラミックスを作製した結果、1160℃の焼結において3.8×10-4 S/cm、1000℃において3.3×10-4 S/cmと高いイオン伝導率が得られた。さらに、ナノ粒子と粉砕前のマイクロサイズのLi7La3Zr2O12固体電解質を混合し焼成することで、同様に1000℃焼成後に3.3×10-4 S/cmの高いイオン伝導率が得られ、また、ナノ粒子のみを用いた場合と比べて、緻密な焼結組織が得られることが示唆された。加えて、ナノ粒子の添加割合を0-100wt%の範囲で変えることで焼結挙動を調査した結果、焼結駆動力の異なるナノ粒子とマイクロ粉体間において焼結が進行している様子を明らかにした。これらの結果から、ナノ構造を導入したLi7La3Zr2O12固体電解質粉体に加えて、ナノ構造を導入する前のマイクロ粉体を混合することで、さらに緻密化が期待できることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

液相法によるナノ構造の導入では、水と有機溶媒に対するLi7La3Zr2O12固体電解質の溶解性を調査し、イソプロパノール中で最も安定であることが分かった。これらの結果を踏まえて、水熱法またはソルボサーマル法によるナノ構造導入を進めている。また、当初の計画にはなかったが、導入するナノ構造のサイズを決定するために、Li7La3Zr2O12固体電解質のナノサイズ効果を先に検証するべきと考え、トップダウン法によりLi7La3Zr2O12固体電解質ナノ粒子を作製し焼結性を調査した。その結果、60 nm程度の粒子径でも1000℃以下に焼結温度を低減させることができることを明らかにした。また、ナノ粒子とマイクロ粉体の混合が有効であることを明らかにし、本研究が目的としている10 nm以下のサイズを持つナノ構造を導入することに加えて、Li7La3Zr2O12セラミックスの緻密化にはバイモーダルな粒度分布を持つ粉体が必要であることが分かった。さらに、ジルコン酸ランタンを主成分とするナノ粒子を用いた焼結によっても、同様の緻密化が起こることが示唆された。低温焼結性や塑性変形のその場観察では、コロナ禍により装置の使用ができない状態にあるため、最終年度に実験が実施できるように準備を進めている。

今後の研究の推進方策

液相法によるLi7La3Zr2O12固体電解質ナノ粒子の合成では、溶解性の観点からイソプロパノールが適当であることが分かったため、イソプロパノール溶媒に適した原料と架橋配位子を新たに選定し、ナノ構造の導入を進める。また、ジルコン酸ランタンを主成分とするナノ粒子を用いた場合でも緻密化と高イオン伝導率が達成できることが示唆されたため、液相法により作製が容易なLa2Zr2O7についても検討することで、ナノ構造の形成とマイクロ粉体表面への固定化を確実に進める。一方、液相法によるナノ構造の導入が困難である状況を想定し、ボールミル粉砕法による10 nm以下のナノ粒子の作製と、マイクロ粉体表面への固定化を進める。電子顕微鏡下での焼結性・塑性変形性のその場観察は、装置利用が可能になり次第進めるが、不可能な場合には、圧縮試験や収縮率試験を単独で行い、観察結果と併せて解析を行うことで対応する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍により学会参加ができなかった、またはオンライン開催となったため移動にかかる経費が不要となった。また、2020年度前半では研究活動が十分に行えなかったため、装置利用、消耗品に関する費用が計画よりも少額となった。さらに、電子顕微鏡による焼結性と塑性変形性のその場観察をするために購入を検討していた加熱圧縮装置は、外部研究機関が所有していることが分かったため、そちらを利用することとした。加熱圧縮装置に使用を予定していた物品費は、他研究機関の装置利用費および実験研究推進のために電気炉などの増設費用に当てる。また学会発表に加えて、学術誌等での成果発表を積極的に進めることで、昨年度からの繰越金の使用を進めていく。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 学会発表 (3件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] Li7La3Zr2O12系固体電解質ナノ-マイクロ混合粉の焼結挙動とイオン伝導性2021

    • 著者名/発表者名
      渕上輝顕、山本颯人、谷端直人、中山将伸、柿本健一
    • 学会等名
      日本セラミックス協会2021年年会
  • [学会発表] 架橋配位子アシスト水熱法による酸化物ナノ粒子集積体の合成と表面機能2020

    • 著者名/発表者名
      渕上輝顕、柿本健一
    • 学会等名
      MRMフォーラム2020
  • [学会発表] Li7La3Zr2O12系固体電解質材料におけるボールミル粉砕効果2020

    • 著者名/発表者名
      山本颯人、渕上輝顕、柿本健一
    • 学会等名
      日本セラミックス協会第33回秋季シンポジウム
  • [産業財産権] 表面3次元ナノ構造粉体、その緻密体及びそれらの製造方法2020

    • 発明者名
      柿本健一,渕上輝顕,木俣良介,山本颯人
    • 権利者名
      柿本健一,渕上輝顕,木俣良介,山本颯人
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2020-128435

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公開日: 2021-12-27  

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