研究課題
本研究では、シングルnmスケールの金属水酸化物塩粒子に着目することで、その電気化学触媒活性を化学組成やサイズの観点から網羅的に評価し、高活性な金属水酸化物触媒設計の指針を与えることをめざした。2021年度は、まず水酸化ニッケル塩をベースとした触媒の合成と性能評価に取り組んだ。酢酸からデカン酸までの様々な大きさの飽和カルボン酸を配位させた水酸化ニッケル塩ナノ粒子を合成し、水電解にともなう酸素生成反応への触媒として活用した。配位させるカルボン酸が小さくなるにしたがって、触媒サイトへの反応物の拡散がより活発になり、反応効率が向上した。また、サイトの活性自体も向上することを見出した。一方で、これら合成したナノ粒子は一般的な導電材、バインダー材とともに電極上に塗布する手法ではナノ粒子が強く凝集するために、その性能が極端に低下することも明らかとなった。これを受け、電極上にナノ粒子を効果的に配置する工夫に取り組んだ。金属水酸化物塩に特有のイオン交換反応を利用した。自己組織化単分子膜で電極を修飾することでカルボキシル基を表面に露出させる。それらと金属水酸化物塩のカルボン酸を交換することで、水酸化ニッケル塩ナノ触媒を1粒子厚で電極に化学結合させた。酸化還元反応によるとナノ粒子全体の金属サイトのうち90%以上が活性であることが示唆された。これを用いて電気化学触媒としての機能を調査した。水酸化ニッケル塩の触媒活性は、酸化還元反応の前後で特異的に向上することを見出した。高感度反射赤外分光測定により粒子表面のカルボン酸が水酸化物アニオンと交換し、それによって触媒活性が向上することを明らかにした。このメカニズムは他の金属水酸化物塩でも同様に見られたことから、高活性な触媒を設計する指針となると考える。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
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