研究課題/領域番号 |
20K15369
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
芝 駿介 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 助教 (70823251)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 動的ソフトテンプレート / 電解メッキ / 電極触媒 / 微小ナノ多孔質金電極 / メタノール酸化反応 / 酸素還元反応 / アノーディックストリッピングボルタンメトリ |
研究実績の概要 |
令和2年度は、両連続相マイクロエマルションを電解メッキ反応場に利用した、新たなナノポーラス貴金属膜のボトムアップ形成法のコンセプト実証となるデータを金を中心に収集し、論文化した。具体的には以下の通りである。
1) BMEがテンプレートとして機能する条件の洗い出し:予備検討として一部行った通り、界面活性剤の親水性・親油性バランス(HLB)の制御によりBMEの溶液構造を変化させ、それを金ナノ構造に反映させることが再現性よく可能であることを明らかにした。さらに、BMEの溶液ナノ構造は三次元網目状だが、成長する金ナノ構造は、垂直に金リガメントが成長したような構造が得られることがわかった。このことは、BMEの溶液構造が、成長した金によりがメッキ反応とともに変化している可能性を示唆するものであることから、本作製法を「動的ソフトテンプレート」と命名した。当該電極の電極触媒活性は、高活性なキンクやステップを豊富に有するナノ構造を有しており、平坦なスパッタ金膜に比べ、メタノール酸化反応や溶存酸素還元反応における過電圧が低下することが明らかとなった。
2) 微小金電極のナノ多孔質化への応用:動的ソフトテンプレート法を微小金電極のナノ多孔質化にも応用可能であることを実証し、高い電極触媒活性により、亜ヒ酸の電気化学検出(アノーディックストリッピングボルタンメトリ)の高感度化を達成した。作製した微小金電極は、メッキ前の41.5倍の表面積を有することが電気化学的に明らかとなった。さらに面白いことに、亜ヒ酸イオン還元反応に対して過電圧を0.1 V低下させる優れた活性を有することを明らかとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、BMEの溶液構造のサイズを試薬の混合比率を変えるだけで自在に制御できること利用し、金ナノ構造のリガメント直径を40 nmから200 nmの範囲で広範囲制御可能であることを示した。さらに、動的性を有するソフトテンプレートという新たな概念を実証した。加えて、微小電極のナノ多孔質化に応用したことで汎用性を明らかにした。よって、おおむね順調に研究を進めることができていると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本予算の申請時に、当該作製法が金ナノピラーアレイの形成も可能であることを示した。一方で、最近、有機溶媒の種類を変更するだけで、BMEの構造制御性や動的性を存分に活かしたポーラスナノシート等の多彩な金ナノ構造の形成が可能であることも明らかとなった。これは、BMEの相分離速度や金属表面への有機溶媒の吸着が複雑に関与することによる、BMEの動的性を存分に活かした結果といえる。今後は、その動的変化を引き起こす新たなファクターとして表面への吸着種に着目し、金のダイナミックな形態制御や露出結晶面の制御に取り組む。さらに、当該作製法が貴金属のみならず、ニッケルや銅等の卑金属にも応用可能であることを示す。
|