本研究では、多彩なナノポーラス金属膜のボトムアップ構築法として、両連続相マイクロエマルション(BME)を電析反応場とした動的ソフトテンプレート法を提唱し、その実現に取り組んだ。前年度に続きBMEの組成や電析条件がナノポーラス金構造に与える影響を調べ、電析電位とBME中のpH制御により、温度を制御することなく金ナノスポンジと金ナノピラーアレイを作り分けることに成功した。具体的には、中性BME中で、-0.8 Vから-1.2 Vの間で電析することで、15-40 nmのリガメント径を有する金ナノスポンジを形成できること、酸性BME中の界面活性剤濃度を制御することで、リガメント径を100 nmから30 nmに制御した金ナノピラーアレイを形成した。さらに、BME中の金イオン濃度により金ナノピラー数密度を制御できることも見出した。また、BMEを構成する有機溶媒をシクロヘキサンからトルエンに変えるだけで金ナノメッシュ構造が形成することを見出し、種々のキャラクタリゼーションにより、BMEの動的構造変化に伴うトルエンのAu{111}面への特異的吸着がナノメッシュ構造形成につながることを明らかにした。 以上に加え、動的ソフトテンプレート法により白金、銀、銅、ニッケル、ルテニウム等、金属種によらずナノポーラス金属膜を形成できること、そしてそれらの形態がBME中に含まれる吸着種や、その電析の電子移動速度に強く依存する可能性を見出した。一般的に、電子移動速度が遅い銅やニッケル等の電析ではナノピラーアレイ、電子移動速度が速い銀の電析ではナノスポンジが形成されることを見出した。また白金においては、水の化学吸着が電位・結晶面依存的に生じることでナノメッシュ、ナノワイヤ、ナノフレーク等、多彩なモルフォロジーが発現すること、それらがメタノールの電極触媒酸化反応に対して異なる活性を有することを見出した。
|