研究課題
本研究の目的は、リチウム空気電池環境下での硝酸イオンレッドクスの電気化学反応挙動を明らかにすることである。硝酸イオンがリチウム空気電池系において、電池特性を決定する多様な役割を果たしているにもかかわらず、その反応機構は非常に複雑であり、分子レベルでの機構解明には至っていない。本研究では、硝酸イオンをモデルケースとして、その多様や電気化学反応挙動を体系的に理解し、レドックスメディエーターに求められる必要因子を明確にすることを通じて、リチウム空気電池の実用化に不可欠な、可逆的な電気化学反応を可能とする電解液設計に関する知見の獲得を目指す。本研究においては、2020年度に、正極反応化学種の同定を可能とするoperando分析装置を構築、また、2021年度には、電極間クロスオーバーが与える影響調査を実施してきた。これら実績を踏まえ、2022年においては、硝酸イオン/アミド溶媒/フッ素溶媒の混合電解液系に着目し、リチウム空気電池の酸素正極・リチウム負極の双方において高い反応可逆性を実現する電解液の開発に取り組んだ。その結果、1mA/cm2, 2mAh/cm2という非常に高い電流密度・面積容量の条件において、リチウム空気電池の充放電反応の作動に成功した。これは、フッ素溶媒含有に伴い電解液への酸素溶解度が向上したことに加えて、金属リチウム負極側において硝酸イオンに由来する安定な界面被膜が形成したことに由来すると考えらえる。このように、本研究においては、硝酸イオンに着目した材料開発により、リチウム空気電池の安定動作を可能とする電解液材料の設計指針を確立することができた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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