酸化物半導体IGZOは、高移動度、低リーク電流な薄膜トランジスタ(TFT)の材料として近年実用化された。我々は、このIGZOを溶液化し塗布することで、低コスト、簡単なプロセスでTFTを作製する手法を確立した。この過程で、本IGZO膜によりオゾンガスセンサー、ショットキーバリアダイオードも構成できることが分かった。そこで、溶液法により多様な素子を作製する技術の確立を目指すべく、研究を行っている。 本年度は、特にオゾンガスセンサーを構成する技術の確立を目的として行った。In: Ga: Zn = 6: 1: 3 の比率に調製したIGZO前駆体溶液をSiO2熱酸化膜を予め成長させたSi基板上に塗布し、300~340℃で焼成してIGZO-TFT オゾンセンサーを作製した。このTFTを濃度5ppmのオゾンに暴露すると、オン電流が1000分の1以下に減少することでオゾンを検出可能であることと、その感度が、焼成後の膜中に残存する溶液由来のOH基密度と正の相関を示すことが昨年までに分かっていた。今年度は、OH基密度を可変させるために成膜時の湿度を変化させた結果、高湿度時にOH基密度は高くなる一方、感度は予想と逆に低くなった。本TFTを高湿度下で作製すると膜質と電気特性が悪化する傾向が見られた。このような電気特性の悪化は、ドナーとして働くはずの酸素空孔が多いと起こる傾向がみられる事から、OH基の増加は、感度向上よりも、欠陥の増加による膜質悪化を原因とする感度減少効果の方が大きいと考えられる。上記成果は、国際学会「2023 MRS Fall Meeting」等にて発表された。
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