研究課題
本年度は、二酸化炭素還元反応(CO2RR: Carbon dioxide reduction reaction)を進行させる電極触媒の開発を行った。特に、層状複水酸化物(LDH: Layered double hydroxide)に着目した触媒開発を行った。LDHは、二次元シート構造を有する材料であり、金属元素及び酸素原子からなる層と、水分子及び溶液中のアニオン種からなる層から構成される層状化合物である。特に本研究では、銅(Cu)及びアルミニウム(Al)から成るLDH(Cu-Al/LDH)を既報を参考に合成し、それらをCO2RR触媒として展開した。本年で取り組んだ内容は以下に示す(1)Cu-Al/LDHの合成条件の検討、及び(2)Cu-Al/LDHのCO2RR活性の評価、の2点である。まず、(1)の概要を示す。Cu-Al/LDHは既報を参考に、炭酸ナトリウム溶液中に金属硝酸塩を滴下することで合成した。合成する際の溶液のpHとその温度を制御して種々のCu-Al/LDHを合成した。合成したサンプルについて、粉末X線回折及び透過型電子顕微鏡による構造解析を行ったところ、合成溶液のpH及びその温度の選択により、シートサイズやその結晶性が異なることを見出した。次に(2)の概要について示す。本研究では、Cu-Al/LDHのCO2RR活性をガス拡散電極により評価した。まず、既報を参考にガス拡散電極を用いた触媒活性の評価系の構築に成功した。そのセットアップを用いて、種々のCu-Al/LDH触媒についてCO2RRの生成物を評価した。その結果、Cu-Al/LDHでは一酸化炭素及びギ酸がCO2RRの主生成物として得られることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
合成のための装置類、及び触媒評価系をセットアップできた。また、既報通りに実際にCu-Al/LDHの合成に成功したほか、ガス拡散電極を用いた測定系の構築を行い、合成した触媒の二酸化炭素還元活性の評価に取り組んだ。また、特に溶液中に含まれる二酸化炭素還元生成物の定量に成功した。以上の点から、現在までの進捗状況は順調であると考えており、本年度の成果を元に次年度更に高活性な触媒開発に取り組む。
今後は、合成条件のより詳細な検討によるCu:Alの組成の制御、及びX線構造解析の手法や電子顕微鏡による手法により、触媒の構造のより詳細な解析を行う予定である。また、LDHのシートのエッジサイト、平面上、もしくは欠陥サイトに異種元素のドープを行うことで、CO2RR活性の向上、もしくは生成物選択性の制御を試みる。
新型コロナウイルス問題により、学外での活動が制限されたため、旅費が利用できなかったことに加えて、感染拡大防止の処置として学内での研究活動を行えなかった期間があったことが次年度使用が生じた主な原因である。未使用分は、次年度分の出張費、加えて今後の実験作業を円滑に遂行するための消耗品の追加購入のための費用に充当する予定である。
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ACS Appl. Mater. Interfaces
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10.1021/acsami.0c21920