研究課題/領域番号 |
20K15378
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
早川 幸男 岐阜大学, 工学部, 助教 (40799946)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水素製造 / アンモニア / 大気圧プラズマ / 水素分離膜 |
研究実績の概要 |
プラズマリアクターと水素分離膜を組み合わせたプラズマメンブレンリアクターを用いて水素ガスを含んだ混合ガスから水素を分離・精製する際にプラズマ反応場に誘電体(ゼオライト)を挿入することで、水素分離性能を飛躍的に向上させることができることが確認されている。その理由としては「ゼオライト表面で起こる多くの微小な沿面放電」に起因すると考えている。ゼオライト表面で発生する沿面放電をサーモグラフィカメラを用いることにより可視化することを試みた。ゼオライトの有無によるプラズマ反応場内の温度上昇の違いは観測されなかった。この原因としては、プラズマメンブレンリアクターの装置材質に起因すると考えている。プラズマメンブレンリアクターは水素分離膜を表面に溶接したSUS管の外側にS石英管を配する円筒状の構造をしており、SUS管と石英管の間にあるギャップにゼオライトを挿入している。そのため、外部からサーモグラフィカメラにて撮影を行うと石英による遠赤外線の吸収が起こるため測定精度の低下につながった。 そのため、ゼオライトの有無による放電状態の違いを調査する異なるアプローチとして、プラズマ反応場内における印加電圧と放電電荷を計測し、比投入エネルギー(SEI)を計算することでゼオライトによる水素分離性能との相関を調査した。結果として、ゼオライトを挿入することでSEIは大きくなった。また、挿入するゼオライト種を変えることでSEIの値は変化したが、ゼオライトの物性値(Si/Al比、骨格構造、空孔径など)との相関は確認できなかった。反応器への充填率やゼオライト粒子の粒子径や形状が不均一であったことが大きく影響したためにゼオライトの物性値との相関が確認できなかったと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラズマメンブレンリアクター内に挿入したゼオライト表面で発生する沿面放電をサーモグラフィカメラを用いることで簡易的に可視化することを試みた。結果として、ゼオライトの有無によるプラズマ反応場内の温度上昇の違いは観測することができなかった。この原因としては、プラズマメンブレンリアクターの装置材質に起因すると考えている。プラズマメンブレンリアクターは水素分離膜を表面に溶接したSUS管の外側に石英管を配する円筒状の構造をしており、SUS管と石英管の間にあるギャップにゼオライトを挿入している。そのため、装置内部にあるゼオライト表面の温度変化を計測するには外部からサーモグラフィカメラにて撮影を行う必要があるが、その際に石英による遠赤外線の吸収が起こることが判明し、正確な温度変化の計測を行えなかった。 異なるアプローチとして、プラズマ反応場内における印加電圧と放電電荷を計測し、比投入エネルギー(SEI)を計算することでゼオライトによる水素分離性能との相関を調査した。結果として、ゼオライトを挿入することでSEIは増加した。また、挿入するゼオライト種を変えることでSEIの値は変化したが、ゼオライトの物性値(Si/Al比、骨格構造、空孔径など)との相関は確認できなかった。反応器への充填率やゼオライト粒子の粒子径や形状が不均一であったことが大きく影響したためにゼオライトの物性値との相関が確認できなかったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は「ゼオライトの触媒効果によるNH3分解の促進効果」について調査を行う予定である。我々が提案しているアンモニアを原料とした水素製造システムにおいて、プラズマメンブレンリアクターは主にアンモニアを触媒熱分解した混合ガスからの水素精製とリークアンモニアの分解を行う。そのため、プラズマメンブレンリアクターのアンモニア分解特性を調査する必要がある。プラズマリアクターにゼオライトを挿入し、アンモニア分解ガスを模擬したガス(水素75%、窒素24.5%、アンモニア0.5%)を供給することでゼオライトが持つアンモニア分解特性を調査する。比較として、市販されているアンモニア分解触媒(Ni/Al2O3やRu/Al2O3など)を挿入した実験も予定している。
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