本研究では、NaIにドープされたLi+の伝導現象に着目し、新規固体電解質の開発および全固体Li電池の性能向上を目指している。 Li+ドープNaIについて、①Li+とNa+伝導の評価、②全固体電池構築、③更なる伝導度向上に向けた単相試料作製条件の解明を試みた。①については、15NaI・LiBH4を固体電解質に用いてLi/Siセルを充電し、Si内の充電イオン種を二次イオン質量分析法により調べた結果、少量ドープしたLi+がNaI中を伝導することを確認している。しかしメジャーイオンであるNa+が伝導するかどうかは不明であった。本研究ではLi+とNa+共に充電可能なSnを作用極に用いてLi/Snセルを構築し、Sn中の充電イオンを調べた。その結果、Na+の充電量はLi+よりも1桁以上少なく、Li+が優先的に伝導する一方でNa+伝導の寄与は少ないことを実証した。②についてはNaI中のLi+、BH4-組成を最適化し、10μS/cm(@室温)のLi+伝導度を達成した。更にNaI-NaBH4-LiIを電解質に用いてLi/TiS2電池を試作し、60℃において10μA/cm2で安定に充放電することを確認した。③NaI-NaBH4-LiIの固溶体は、合成の際に副反応:NaBH4 + LiI → NaI + LiBH4が同時に進行し、生成したLiBH4により伝導度が低下する。この副反応は低温・高圧下で進行が抑制され、LiBH4の生成量が減少することを解明した。高圧合成で固溶体を単相で合成することで、更にLi+伝導度が向上する可能性が示唆された。 NaIはドープしたLi+が伝導する特異な材料系であるが、同時にLi+/Na+混合系であることも注目される。本研究でNaIをベースとした全固体Li電池の構築に成功したことは、Na化合物をベースとした新規Li+伝導体の創製につながる大きな一歩であると考えている。
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