研究課題/領域番号 |
20K15382
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
石橋 千晶 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 研究員 (80801993)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マグネシウム二次電池正極材料 / 第一原理計算 / 電気化学 / 理論化学 / 分子動力学計算 |
研究実績の概要 |
本研究ではマグネシウム二次電池の中でも、既存のリチウムイオン二次電池よりも高い理論容量と体積エネルギー密度であり高機能が期待される、スピネル型および2種類のスピネルの固溶体Mg-(Co,V)-O4を対象として、第一原理計算による構造緩和計算を行うことで局所構造を明らかにし、生成エネルギーを算出し安定なモデルを提唱することを目的としている。 2020年度ではスピネル型MgCo2-xMnxO4(x=0, 0.5)の放電および充電時の安定な局所構造の探索を行い、放電時におけるMgの挿入・充電時におけるMgの脱離メカニズムを明らかにした。その結果、放電時、MgはMnの近くに挿入される傾向があり、Mn付近からスピネル型構造から岩塩型構造へ変化することが明らかになった。ほぼ完全に岩塩型構造へ変化したモデルと半分程度変化したモデルからMgを脱離したモデルを作成し、放充電後の安定構造の予測を行った結果、完全に岩塩型構造へ変化したモデルはMgを脱離しても完全なスピネル型構造へは戻らず、不可逆的な構造変化であることが分かった。一方、半分程度岩塩型構造へ変化したモデルでは完全なスピネル型構造へは戻ることが予測されたため、可逆的な構造変化における充放電を行うためには、Mgの挿入量の制限などを行い、構造変化の度合いを抑制する必要があることを明らかにした。更に、安定な局所構造における電子密度解析を行い、Mnを置換することによってMn周辺のMgと酸素の結合距離が長く、結合が弱くなるためにMgが結晶内を拡散し易くなることが予測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の対策により、2020年4月~5月は研究活動に大きな制限が掛かり、2020年度に終了するはずのスピネル型Mg(Mg0.5V1.5-xMx)O4の安定構造の探索が終了していない。実験研究ではスピネル型Mg(Mg0.33V1.67-xNix)O4の充放電特性が良いという結果が報告されているため、2021年度はスピネル型Mg(Mg0.33V1.67-xNix)O4の安定な局所構造探索を中心に行い、Mg量との関係について明確にすることによってMg(Mg0.5V1.5-xMx)O4の研究にフィードバックし研究の効率化を図る。
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今後の研究の推進方策 |
2021年はスピネル型Mg(Mg0.33V1.67-xNix)O4の安定な局所構造探索を中心に行い、充放電前および充放電過程における安定な局所構造の探索を行うことによって、充放電時におけるMgイオンの挿入・脱離のメカニズムを明らかにする。更に、本研究で得られた安定構造に対して放射光X線全散乱測定に基づくPDF(Pair Distribution Function)解析を行うことで、本理論計算の結果の妥当性を示す。また、安定な構造における状態密度計算および遷移状態計算、電子密度計算などの電子状態計算を行うことで充放電時の遷移金属の価数変化およびMgと酸素の結合状態を明らかにし、充放電特性の予測を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症によって予定していた、学会出張のための旅費が当初の計画よりも大幅に少なくなった。従って、次年度は差額分を研究活動に必要なVASPワークステーションの購入の費用に充てる使用計画である。
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