研究実績の概要 |
近年、カーボンニュートラルな社会の実現のために蓄電池の需要が増加している。現在繰り返し充放電が可能な蓄電池としてLiイオン電池が広く使用されている。しかし、原料であるLi金属は希少資源であるため、Liイオン電池以外の次世代畜電池材料の開発が急務の課題である。そこで、資源が潤沢にあるMg金属は2価のカチオンであるため高い体積エネルギー密度が期待される。そこで、マグネシウム二次電池正極材の中でも特に三次元的な拡散経路を有するスピネル型MgM2O4(M=Co,Ni,Mn,V)酸化物の正極特性に注目した。更に第一原理計算を用いた理論的予測があればMgM2O4(M=Co,Ni,Mn,V)のような複雑な組成をもつ酸化物であっても容易に局所構造を予測することが可能である。当研究の目的は、スピネル型MgM2O4(M=Co,Ni,Mn,V)に対して静的な理論計算による新規マグネシウム二次電池正極材料の設計を行い、かつ設計した材料に対して動的な分子シミュレーションを行い、温度を考慮した条件下で、充放電過程における詳細なMgイオンの伝導経路メカニズムおよびイオン挿入量を解明することである。 当該年度ではスピネル型Mg1.33V1.57Ni0.1O4の充放電前および充放電時の安定構造を探索し、充放電過程における局所構造の変化とMgイオンの挿入・脱離のメカニズムを明らかにする計画であった。更に研究対象を広げてMgCo0.5-xMnNi0.5AlxO4(x=0, 0.3)の安定構造探索も行い遷移金属種以外のAl原子の影響についても検討を行った。
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