研究実績の概要 |
水素生成に活性を示すIr助触媒を担持したIrドーピングSrTiO3(Ir/SrTiO3:Ir)光触媒における誘導加熱処理効果を調べた. 固相法によって合成されたSrTiO3:Irに対して含浸法によりIr助触媒を担持させた.その後, 高周波誘導加熱(HI)装置を用いてアルゴン雰囲気下でアニール処理を行った.HI処理では導電性グラファイトるつぼを用い, 放射温度計によって,るつぼ上の温度をモニターした. 673から1023 KでHI処理を施したIr/SrTiO3:Ir光触媒による可視光照射下(λ>440 nm)における犠牲試薬を含む水溶液からの水素生成活性を調べたところ, いずれの温度条件においても水素の生成を確認した.HI未処理のIr/SrTiO3:Ir光触媒は水素生成活性をほとんど示さないことから, HI処理による本光触媒の高性能化に成功した.昇温に10秒程度,室温までの冷却に10分程度でHI処理を終えることができる.したがって,非常に短時間で本光触媒の高性能化を達成できた点は特筆すべき事項である.拡散反射スペクトルより,873-1023 Kで処理を行った試料において,SrTiO3にドーピングされているIrイオンがIr(IV)からIr(III)に一部還元されていた.蛍光X線分析によってIrのモル比を算出した結果,いずれの温度条件においても誘導加熱処理によるIrの揮発は起こっていなかった。さらに,HI処理の最適温度条件であった973 Kに温度を固定し,Ir助触媒の担持量の最適化を0.38-1.14 wt%の範囲で行ったところ,0.76 wt%が最適であった. Ir以外の金属助触媒(Rh, Pd)も検討したところ,Irと同様,誘導加熱処理によって活性が向上した.このように誘導加熱処理による本光触媒の高性能化に成功した.
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