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2020 年度 実施状況報告書

低スピン電子配置の導入による3d金属酸素発生触媒の活性化

研究課題

研究課題/領域番号 20K15387
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

大岡 英史  国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (90825994)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード電気化学測定 / 反応動力学解析 / メカニズム
研究実績の概要

水の電気分解による水素製造は、クリーンなエネルギー源として大いに期待されている。しかし、水素を発生させようとした際、対となる酸素発生反応がプロセス全体の律速となることが知られている。現在、酸素発生反応に対して最も活性・安定性の点から優れている人工触媒は酸化イリジウムと呼ばれる貴金属触媒であり、代替材料の開発が急務である。

今年度は、酸化マンガンを候補として検討を行い、電解中で活性が減衰する反応機構の追跡に努めた。具体的には、ガンマ型の酸化マンガンを電析法で合成し、ChronoamperometryおよびChronopotentiometryでその酸素発生触媒能を評価した。合成条件(電析時間や電析電流、温度)などによって材料の寿命が変化するだけでなく、最終的に劣化するに至るまでの触媒活性の増減の様子も異なった。これは、活性という短時間の触媒の挙動をを説明するために想定されてきた反応機構を拡張しなければ、安定性という長時間の挙動を説明できないことを強く示唆する結果である。

これに基づき、紫外・可視吸収分光高度計を用いて電解液中に溶出したMnイオンの同定・定量を試みた。その結果、既報で反応機構への関与が述べられているMn2+、Mn3+、Mn4+に加え、吸収スペクトルへの寄与が少ない(モル吸光係数が小さい)化学種が存在し、それがMn4+の沈殿生成に寄与していることがわかった。この未知の中間体の生成速度は、これまで活性を議論する際に想定されてきた反応よりも数桁遅い反応である一方、触媒の寿命という長期特性を大きく左右する可能性があることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

触媒機構の理解が進み、順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

これまでに想定されていた反応機構だけでは実験結果を説明できないことが明らかとなり、反応機構をどのように拡張すれば良いかの検討を行った結果、新たな中間体を仮定する必要があることがわかった。今後は、再現性の確認やアクション実験など、別方面からの検証を行い、化学種の同定を行い、その後論文発表を行う。

次年度使用額が生じた理由

今年度は実験開始が緊急事態宣言により遅れたため、次年度使用額が生じた。特にポテンショスタットなどの機器を購入する際に、デモ測定を含めた機種選定に十分な時間が取れなかったため、今年度は見送ることにした。

次年度に再度、ポテンショスタット購入を検討する。特に安定性を評価するための長期測定を行う場合、スペース効率や測定系当たりの価格を考え、複数の電気化学測定を同時にできるマルチチャネルのポテンショスタットの購入を検討したい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Non-Zero Binding Enhances Kinetics of Catalysis: Machine Learning Analysis on the Experimental Hydrogen Binding Energy of Platinum2021

    • 著者名/発表者名
      Ooka Hideshi、Wintzer Marie E.、Nakamura Ryuhei
    • 雑誌名

      ACS Catalysis

      巻: 11 ページ: 6298~6303

    • DOI

      10.1021/acscatal.1c01018

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Sabatier Principle in Electrocatalysis: Basics, Limitations, and Extensions2021

    • 著者名/発表者名
      Hideshi Ooka, Jun Huang, Kai S. Exner
    • 雑誌名

      Frontiers in Energy Research

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.3389/fenrg.2021.654460

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2021-12-27  

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