研究課題/領域番号 |
20K15391
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西山 尚登 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (10850670)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 可視光応答型光触媒 / 金属イオンドープ / 酸化ジルコニウム / 酸化チタン |
研究実績の概要 |
今年度(2020年度)は、申請者が酸化チタンを用いて、独自に開発してきた可視光応答型光触媒の新奇高活性化手法である、「ドープした金属イオンの原子価状態制御法」のさらなる高活性化・応用を指向し、粒子径制御および他の金属酸化物への適用を指向して研究を推進させた。 粒子径制御法としては、層状の酸化マンガン(K-birnessite)の層内を合成場として、層間距離を種々のアルキルアンモニアを用いて調節し、粒子径を制御する手法を試みている。ステアリルアミンを用いることで、K-birnessiteの層間距離を0.7 nm から約3.1 nmまで広げることができた。 他の金属酸化物への応用として、酸化チタンよりも高い酸化力を有する酸化ジルコニウムに着目した。ゾル―ゲル法で金属イオンをドープした可視光応答型酸化ジルコニウムの合成にも着手した。溶媒は水のみとし、加水分解の触媒として用いた硝酸の濃度を調節することで、透明なジルコニアゾルを調整できた。さらにこのゾルに透析を行うことで、硝酸イオンやプロトン等を除去(精製)できた。透析時間の調節によって、ジルコニアゾルのpHを制御でき、ドープする金属イオン(白金イオン等)が水中で形成する錯体と、ジルコニアの表面電荷との静電的相互作用を利用して、金属イオンをドープした新規な可視光応答型酸化ジルコニウムを合成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していたK-birnessiteの層間距離の調節は他の文献で報告されている方法で追試できたが、層内でのゾル―ゲル反応による粒子径を制御した光触媒粉末の合成はまだできていない。しかし、2年目に計画していた金属イオンドープ型可視光応答型酸化ジルコニウムの合成法はすでに確立できており、一部は物性や光触媒活性等の評価にも着手している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に引き続き、層間を利用して粒子径を制御した可視光応答型光触媒および金属イオンをドープした酸化ジルコニウム粉末を合成する。これらの触媒粉末を紫外可視光拡散反射スペクトル、X線回折、窒素吸脱着等温線測定、X線光電子分光測定、X線吸収端近傍構造測定、フェムト秒時間分解拡散反射スペクトルを測定し、光吸収能(バンドギャップ)、結晶系、BET比表面積、表面近傍およびバルクの金属イオンの原子価状態、光生成キャリアダイナミクスを明らかにする。 光触媒活性は、水溶液中の難分解性・発がん性物質である4-クロロフェノールの可視光照射下における分解効率によって評価する。物性と光触媒活性との関連性を明らかにし、金属イオンの原子価状態制御法のさらなる高活性化に必要な指針を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究機関を移動したため。
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