研究課題/領域番号 |
20K15393
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡本 泰典 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50843405)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光触媒反応 |
研究実績の概要 |
複数の酵素 (生体触媒) を同時利用した酵素カスケードでは、酵素反応の利点である温和な反応条件と高い選択性に加え、中間体の単離・精製を省略可能なため、高い空間時間収率も期待できる。 このように低環境負荷型の物質変換技術として、酵素カスケードは有望である。 酵素カスケードに合成触媒を統合できれば、合成可能な分子の種類が飛躍的に増大する。しかし、合成触媒と生体触媒では至適反応条件が大きく異なることが多い。本報告者は水中 (pH 7、常温) という酵素反応と同様の条件下で動作するイリジウム錯体を予備的に見出していた。本研究では、このイリジウム錯体触媒の生成物によって駆動する天然酵素を組み合わせることで、犠牲試薬や高価な補酵素を必要としない合成-生体触媒カスケードの構築をめざしている。 令和2年度はin situでの錯形成に基づくスクリーニングによって見出していた上記のイリジウム錯体を合成・単離した。ワンポットでの酵素との共利用の前段階として、酵素を含むいくつかの生体分子の存在下で触媒反応を検討し、イリジウム錯体の生体分子に対する堅牢性を確認した。その結果、このイリジウム錯体は検討したいくつかの生体分子存在下において、その触媒活性を大きく損なうことはなかった。また、イリジウム錯体の存在下においても酵素反応が進行することも確認できている。これらの結果より、本研究で用いるイリジウム錯体は酵素と共利用できる可能性が高いことが示唆された。 このイリジウム錯体は可視光照射下において、過酸化水素を生じることがわかっている。そこで、過酸化水素駆動型の酵素と組み合わせることで上述の本研究コンセプトを実証する。そこで、上述のイリジウム錯体の生体分子に対する堅牢性の検討と並行して、過酸化水素駆動型の酵素の発現系の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の当初の研究実施計画に従い、過酸化水素駆動型の酵素の発現系の構築に取り組んだ。また、並行して、合成触媒および生体触媒の相互不活性化に関してもポジティブな予備的知見を得ることに成功している。これらより、概ね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は過酸化水素駆動型の酵素の大量発現および精製を実施し、イリジウム錯体とのカスケード反応を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年3月に新型コロナウイルスの対応のため、在宅勤務命令が下り、実験計画を変更せざるを得なくなったため。
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