本研究では、任意の転写物の細胞内存在量を発光により検出するプローブの開発を試みた。この目的を達成するため、RNA認識モジュールおよび発光タンパク質ルシフェラーゼの組み合わせを利用することにした。RNA認識モジュールとしては、天然に存在するRNA切断酵素Cas13を利用した。また、Cas13によるRNAの認識を測定可能な信号に変換する仕組みとしては、ルシフェラーゼの構造変化に伴う発光能変化を利用した。Cas13と円順列変異を施したルシフェラーゼを融合することで、Cas13が転写物と結合した結果プローブに生じる構造変化により発光能が変化するプローブを設計・構築した。 構築したRNA認識モジュールが標的とする転写物を認識すること、またその認識能は特異的であることを確認した。また、標的RNAを変更することで異なる種類の標的RNA選択的にプローブが結合することを明らかとした。構築したプローブを生細胞に発現させたところ、発光が確認された。観察された発光値が実際のRNA量と対応していることを調べるため、細胞内標的RNA量をRNA干渉により低下させた場合との比較を行った。結果、プローブのRNA量変化に対する応答性は最大で1.2倍強であり、RNA量変化に追従して発光値が変化するものの、その変化率の大きさには課題が残った。 一方、応用先として計画している時計タンパク質のスプライシング変異体特異的な検出に関してはその操作・測定系の開発が進んだ。開発するプローブの応答性をリアルタイムで検証することを目的としてスプライシング変異体の割合を人為的に制御する光操作ツールを構築した。この光操作ツールのスプライシング制御能を測定するため、二色発光レポーターを構築し、生化学実験との比較により時計タンパク質のスプライシング変異体の量比を反映したシグナルが観測されることを見出した。
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