研究課題/領域番号 |
20K15398
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
村瀬 裕貴 長崎国際大学, 薬学部, 特任助教 (10814486)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CGG repeat RNA / repeat expansion disease / グアニン4重鎖 / ステム-ループ構造 / RNA構造変換 |
研究実績の概要 |
ゲノム中には3-6塩基程度の短い配列で構成されたリピート領域が存在しており、遺伝子発現制御など様々な生体現象に関与している。このリピート領域の異常伸長は、遺伝子のサイレンシングや転写後RNAの毒性獲得などを引き起こし、リピート病と呼ばれる疾患の原因となることが知られている。疾患原因リピートの一つであるCGGリピートRNAは、グアニン4重鎖構造などの異常構造を形成し、その結果、RNA凝集体の形成や、開始コドン非依存型の翻訳 (repeat-associated non-AUG [RAN] 翻訳)を介した凝集性ポリペプチドの産生などによる細胞毒性が発生する。このように、異常リピートRNAの高次構造が疾患の直接的な原因となる例が報告されており、リピートRNAの高次構造を創薬標的とした低分子開発が盛んに行われている。本研究では、異常RNA構造の人為的な変換がリピート病の治療に有効であると考え、リピートRNAに選択的に結合し、かつRNAの構造変化を誘起する低分子リガンドの開発を行った。 RNAに対する結合能評価の結果、本分子はCGGリピートRNAの形成する準安定構造の一つであるステム-ループ構造内のG-Gミスマッチ部位に選択的に結合し、RNA構造を著しく安定化することがわかった。また、RNAの構造変化を調べる種々の評価の結果、興味深いことに、本分子はCGGリピートRNAの形成するグアニン4重鎖構造をステム-ループ型へと変換する特性を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り昨年度に引き続き、本リガンド分子のRNA結合能並びにRNA構造変化誘起能の評価を行った。未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動による評価の結果、CGGの8回リピート配列のステム-ループ構造に最大で3分子のリガンドが結合することがわかった。上記標的RNAは、3つのG-Gミスマッチ部位を有することから、本リガンドのG-Gミスマッチへの結合性性が示唆された。グアニン4重鎖の蛍光プローブであるチオフラビンTを用いた評価の結果、CGGリピート配列はカリウムイオン含有緩衝液中にてグアニン4重鎖を形成することが示唆された。また、塩基対未形成グアニンの選択的切断酵素であるRNase T1を用いたRNA構造解析の結果では、リガンド添加により、グアニン4重鎖からステム-ループ構造への変換を示す切断パターンが観察された。
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今後の研究の推進方策 |
CGG配列以外にもグアニン4重鎖を形成可能なリピート配列が知られており、これらに対して同様の評価を行い、本リガンドのRNA構造変換誘起能を調べていく。また、リガンドの基本構造を決定することができたので今後は構造活性相関を調べ有用な修飾構造の探索を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、参加を予定していた国際学会及び国内学会がリモート開催となったため、旅費に未使用分が生じた。この未使用額は次年度の研究用試薬、機器類購入費、学会旅費として使用する予定である。
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