研究課題/領域番号 |
20K15401
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大澤 昂志 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (00783226)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 核酸化学 |
研究実績の概要 |
本研究は核酸医薬に利用できる実用的な人工核酸の開発することを目的とする。その実現に向けて、短工程で合成可能でかつ糖部とリン酸部の配座を厳密に固定した人工核酸は、今までにない実用的なオリゴ核酸材料になると考えた。そこで今回、5員環-6員環のトランス縮環構造によって糖部とリン酸部の配座を固定化した2′,3′-架橋型核酸を立案し、その合成に着手した。その結果、チミジンから7工程かけて、5′位に1-ヒドロキシ-ジメトキシホスホリルメチル基を導入したチミジン誘導体を合成し、二種類のジアステレオマー (R体およびS体) をそれぞれ単離することができた。 しかし、得られたチミジン誘導体と5-メチルウリジンから3工程から5工程かけて別途合成した核酸誘導体とのカップリングを試みたが、望みの二量体を得る条件を確立することは本年度中はできなかった。その合成検討の中で、5′位を1-ヒドロキシ-ジメトキシホスホリルメチル化したチミジンを強塩基で処理すると、導入したリン酸エステルが脱離することがわかった。そこで、年度途中で当初の計画を変更した。すなわち、1,4-ジオキサン環で縮環したホスホン酸エステル構造を持たない2′,3′-架橋型核酸を新たに設計し、その合成に着手した。現在のところ、5-メチルウリジンから2工程かけて合成した核酸誘導体と、グルコースから8工程かけて誘導したフラノース誘導体のカップリング、並びに、環化前駆体の合成まで達成している状況にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、2′,3′-架橋型核酸の合成と構造解析、さらに、2′,3′-架橋型核酸で修飾したオリゴ核酸の二重鎖核酸形成能の評価を行うことを目標にしていた。しかし、1-ヒドロキシ-ジメトキシホスホリルメチル化したチミジンが塩基性条件下で不安定であったことなどが理由で、当初の計画で予定していたオリゴ核酸合成までには至らなかったが、年度途中で当初の計画を変更し、ホスホン酸エステル構造を持たない2′,3′-架橋型核酸の環化前駆体まで合成することができた。このように当初予期していなかった問題があったが、本研究課題はおおむね順調に進展している状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
ホスホン酸エステル構造を持たない2′,3′-架橋型核酸の合成を引き続き進める。合成した人工核酸は当初の予定通りアミダイト体へと誘導した後にオリゴ核酸へと導入し、構造解析、二重鎖核酸形成能、核酸分解酵素 (3′-エキソヌクレアーゼ) や血清に対するオリゴ核酸の抵抗性 (酵素耐性能) の評価を行う。また、研究計画立案時に設計した2′,3′-架橋型核酸の合成も継続し、1-ヒドロキシ-ジメトキシホスホリルメチル基が脱離しないカップリング条件を探索する。
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