研究実績の概要 |
ヒト細胞における非標準構造DNAの構造、特性などを直接観察することにより、その非標準的なDNAの生物学的機能の解明と関連する疾患治療薬の開発に向けた重要な情報を提供する。申請者は“フッ素科学”を応用し、試験管内およびアフリカヅメカエル卵母細胞内でテロメアRNA構造の可視化を実現した( Nat. Protoc. 13, 652, 2018)。フッ素化学とは、官能基としてのフッ素基の導入と19F-NMR法の応用である。本手法で用いるフッ素は天然存在比が100%であり、プロトン核と同等の感度を有し、また最大の利点は細胞内にはフッ素が存在しないため目的のシグナルのみを検出することが出来る。細胞内での有用性は極めて高いと言える。申請者は以前の研究に基づいて、新規のフッ素化2'-デオキシ-グアノシン誘導体(8-CF3-dG)を合成し、Z型DNA配列中に投入し、19F-NMR分光法を用いて試験管内および生きているヒト細胞内におけるZ型DNA構造を解析した(Nucleic Acids Res. 48, 13, 7041, 2020; Curr. Protoc. Nucleic Acid Chem. 1, e28, 2021)。また、DNAアプタマー配列に入導入し、標的タンパク質である血液凝固因子トロンビンに強く結合能を有するアプタマーの開発に成功した(J. Med. Chem., 64, 1, 711, 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 新規のフッ素化2'-デオキシ-グアノシン誘導体 (CF3-dG) を合成し、それを利用して、19F NMRアプローチにより生きているヒト細胞のZ-DNA構造の解析を成功した。(Nucleic Acids Res. 48, 13, 7041, 2020; Curr. Protoc. Nucleic Acid Chem. 1, e28, 2021)。 (2) DNAアプタマー配列に導入、標的タンパク質である血液凝固因子トロンビンに強く結合能を有するアプタマーの開発に成功した(J. Med. Chem., 64, 1, 711, 2021)。 (3) 19F NMRアプローチによりテロメアDNAとリガント分子相互作用するのかを明らかにした(RSC Adv. 10, 71, 43319-43323, 2020)。
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