生細胞内での非標準構造DNAの構造、特性などを調べることは、それらの生物学的機能と疾患治療薬の開発を理解するのに役立つ。しかしながら、細胞内生物物理学的および生化学的方法の欠如は、生細胞内の生体分子の構造探索を制限している。このような現状を踏まえ、以前の研究に基づいて“フッ素科学”を応用することで、19F-NMRにより上述の問題点を一挙に解決し、非標準構造DNAの細胞内における可視化を実現出来るのではないかと考えた。 19F-NMR分光法を用いて、生細胞内環境下での非標準構造DNA構造の解析をおこなった。具体的には、まず19F-NMRセンサーとしてフッ素化2'-デオキシ-グアノシン(CF3-dG)および2'-グアノシン(CF3-rG)誘導体を新規に合成した。 次に、細胞表面に細孔を形成する毒素タンパク質ストレプトリジンO(SLO)を用いて生細胞(Hela細胞)内に19Fで標的したDNA核酸配列を導入した。SLOは原形質膜のコレステロールと結合することができ、SLOオリゴマー化は直径30nmの原形質膜に細孔を形成し、生体分子の細胞への透過化を可能にする。この細孔は、カルシウムイオンを添加することで閉じることが可能である。 19F-NMR分光法を用いてin vitro試験管内および生細胞(Hela細胞)内の19F-NMRスペクトルを比較し、核酸-タンパク質および核酸-小分子の相互作用の解析をおこなった。細胞内の非標準的なDNA立体構造の可視化を実現した。
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