研究課題/領域番号 |
20K15406
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
天野 亮 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (20818687)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | RNAアプタマー / SELEX / ウイルス様粒子 / デングウイルス |
研究実績の概要 |
デング熱に対する中和抗体の開発は難航している。その原因の一つとして、抗体依存的な感染増強現象による症状の重篤化が挙げられる。本課題では、核酸抗体「RNAアプタマー」の分子特性を活用し、感染増強のリスクを回避できる新規デングウイルス中和分子を創製することを目指している。本年度はまず、種々の選抜条件においてデングウイルス様粒子(DENV-VLP)を標的とするアプタマー選抜法(SELEX)を実施した。その結果、約9回程度の選抜と増幅操作の繰り返しによって、ライブラリーを濃縮できることが分かった。その後、濃縮ライブラリーをハイスループットシーケンサーで解析し、得られた膨大な配列情報から、アプタマーに特化した解析ツール(doi: 10.1038/mtna.2015.4.)を用いて、候補配列を抽出した。次に、表面プラズモン共鳴(SPR)法によるアプタマーとVLPの結合評価系を確立・最適化し、候補配列の結合性を評価した。その結果、DENV全血清型のVLPに対して強く結合する配列、DENV1型及び3型VLPに対して強く結合する配列、DENV3型VLP特異的に強く結合する配列と、異なる結合特異性を有する複数のアプタマー分子の取得に成功した。さらに、確立した結合評価系を基盤として、既存の中和抗体との競合的な結合を指標とした「中和能」の検証も実施した。その結果、取得したアプタマー分子のうち、幾つかの分子が既存の中和抗体に対し競合阻害性(≒中和能)を示すことを確認した。このように本年度では、目標達成のためのアプタマー選抜技術及び機能評価系を構築でき、さらに当該技術の活用によって、中和能を有すると推測されるアプタマーの取得に成功している。従って、当初の計画通りに進行できたと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた、DENV-VLPを標的としたアプタマー選抜技術の確立・最適化、候補配列の結合性および既存の中和抗体との競合阻害性(≒中和能)を評価するためのSPR解析法が完了している。さらに、当該技術を活用し、DENV-VLPに対して種々の結合特異性を持つアプタマー分子及び競合阻害性(≒中和能)を示すアプタマーの取得の成功している。以上の理由によって、おおむね順調に進んでいると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に構築した種々の技術の再評価を行いつつ、新規デングウイルス中和分子の創製を目指す。具体的にはまず、取得したアプタマー分子に対して、結合活性及び競合阻害性(≒中和能)を低下させないよう可能な限りの短鎖化を施す。次に、短鎖化アプタマーの骨格となる配列(ステム等)以外をランダム化したライブラリによるスクリーニング法「Doped SELEX」を実施し、配列最適化を施すことでより一層特異的かつ強固に結合するアプタマーの創製を試みる。これらの取組によって、デングウイルスに対して高い中和作用を発揮する実用的なアプタマーの創製を目指す。
|