研究課題
本研究では、核酸抗体「RNAアプタマー」の分子特性を活用し、感染増強リスクを回避できる新規デングウイルス(DENV)中和分子を創製する。本年度は、製薬企業に導出できる質の高い分子創製を目指し、昨年度に構築したデングウイルス様粒子(DENV-VLP)に対するアプタマー選抜法(VLP-SELEX法)、配列解析手法及び結合評価系を適宜最適化しながら、引き続き、DENV-VLPに対して結合活性及び既存の中和抗体に対する競合阻害活性(≒中和能)を発揮する分子の探索を実施した。その結果、昨年度に取得したアプタマーと比べて、より高い結合活性及び競合阻害性を持つ分子を取得することに成功した。また、アプタマーを医薬品とする場合、安全性や品質管理、製造コストの観点から、可能な限り短くする必要がある。そこで、取得したアプタマーの短鎖化を試みた。その結果、結合活性及び競合阻害活性をほぼ低下させることなく、全長78残基のアプタマーを53残基まで短くすることに成功した。さらに、短鎖化したアプタマーの結合活性をより向上させるため、当該分子の骨格となる配列(ステム等)以外をランダム化したライブラリを用いたアプタマー選抜法(Doped SELEX法)を実施し、配列最適化を試みた。現在、最適化したアプタマーに対する詳細な解析を進めている。このように本研究課題では、抗体との相性の悪さ故、中和分子の創製が困難とされるDENVを標的として、VLPという優良なアプタマー選抜材料、それに対する選抜技術、配列解析手法及び結合評価系を確立・最適化することで、感染増強リスクのない新規DENV中和分子の創製を達成することができた。さらに、本研究にて構築した中和分子創製技術は将来、未だ有効な治療薬のない多くのウイルスに対して適応な基盤技術へと発展することも期待できる。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻: 118 ページ: e2019497118
10.1073/pnas.2019497118
Scientific reports
巻: 11 ページ: 2976
10.1038/s41598-021-82350-w