これまで、海綿から様々な天然化合物が報告されてきた。最近の研究によって、このような二次代謝産物の多くは生体内に共生する微生物が生産していることが示唆されている。しかしながら、環境微生物の99%以上は難培養性といわれており、環境微生物のほとんどが未利用な探索資源であることが明らかとなってきた。本研究では、海綿内に共在する難培養性微生物を特殊な培養デバイスを用いて培養し、そこから新規天然化合物を精製し、その化合物の構造や生物活性を明らかにすることを目的とする。これまで未利用であった大部分の海綿内共在微生物から生物活性物質を探すことは、新たな化学骨格を有する天然化合物の発見につながり、将来的には画期的な医農薬の開発につながる可能性がある。 本年度では、火災のため消失してしまった菌株ライブラリーの作成を再度行った。海綿を採集し、生きたまま飼育施設へ運搬した。海綿が安定したのを確認したのち、海綿内微生物をDiffusion chamberへ封入し、再度海綿内へ戻しin situ培養による一次培養を行った。一次培養後、Diffusion chamber内微生物を寒天培地に播種し二次培養を行い、純粋培養を行うことで菌株を入手した。これら微生物は、通常の寒天培地に限界希釈して播種する培養方法では得られない新規性の高い微生物も含むことから、これまでの培養手法で得られた微生物とは異なる二次代謝産物を含むことが考えられる。今後、これら菌株に含まれる新規な生物活性物質の探索を行っていく。
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