研究課題/領域番号 |
20K15410
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
橋本 拓哉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (10783714)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 異種発現 / コドン最適化 / 人工遺伝子クラスター / 非リボソーム型ペプチド |
研究実績の概要 |
難培養微生物の遺伝子配列を利用した化合物生産には、遺伝子を宿主内で自在に発現させる技術の確立が必要である。本研究はChromobacterium属細菌の生産するYM-254890を題材とし、グラム陰性細菌由来のペプチド化合物をグラム陽性細菌である放線菌内で生産することを検討する。 当該年度はYM-254890の生合成遺伝子クラスターについて、合成DNAを利用して人工生合成遺伝子クラスターの作製を検討した。Chromobacterium属細菌のYM-254890生合成遺伝子クラスターを鋳型として、放線菌での発現に適したコドン頻度となるよう、放線菌型コドンへと変換した配列をデザインした。遺伝子クラスターには8つの遺伝子が含まれる。これら各遺伝子について、放線菌型コドンへとコドン変換を行った。次に変換した遺伝子を、元の整合性遺伝子クラスターの順に再配置し、翻訳カップリングの箇所についても最適化を行った。最適化によって得られた、約40 kb 長の人工遺伝子クラスターの配列設計をクローニングのための相同領域を持たせながら、断片化し、 1 kb ずつの合成DNA断片を設計した。設計した各DNA断片を化学合成によって取得した。取得した断片について、シームレスクローニングを繰り返しながら、段階的につなぎ合わせることでコドン最適化した完全調の人工生合成遺伝子クラスターを作製することに成功した。本遺伝子クラスターについていくつかの放線菌内での発現について検討した。しかしながら、現在までに目的化合物生産には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
難航が予想された人工遺伝子クラスターの構築については想定を超えて進展し、昨年度のうちに完了した。一方で、肝心の物質生産についても検討したものの、化合物の取得に至っていない。これは利用している放線菌宿主内で、遺伝子がうまく発現していないためと予想される。今後は発現を最適化する方策について検討し、化合物生産へとつなげていく。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子発現を促すように、人工遺伝子クラスターの再設計を今後行う。遺伝子の転写は遺伝子クラスター先頭に配置したプロモーターに依存している。今後はプロモーターを複数の箇所に導入し、転写の効率化を検討する。さらにコドン最適化についても設計を見直し、翻訳効率を改善することも検討する。また開始コドン上流に翻訳効率を改善するような配列の導入についても検討し、放線菌宿主内での異種遺伝子発現を促す方策について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、コロナウイルスの影響により、予定していた旅費の使用がなくなったことや、合成遺伝子の設計費用について想定以下で済んだ点が大きい。
使用計画については、設計のうまくいっていない人工遺伝子クラスターの改変について大幅な設計変更が必要なため、その修正に必要な合成DNAの購入へと充てる計画でいる。
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