研究課題
本研究課題は、癌細胞上に存在する癌関連糖脂質(ガングリオシド)を標的に、その効率的合成法の開発、さらに分子プローブを利用した癌細胞の増殖・浸潤の分子基盤の解明を目的としている。初年度である本年度は、当初の計画に基づいて、ガングリオシドプローブの化学合成に注力し、以下の成果を得た。1.新規ガングリオシド合成法の開発ガングリオシドの化学合成において、これまでは糖鎖へのシアル酸の立体選択的導入が課題であった。そこで、この課題を克服する新たなガングリオシド合成法を立案した。申請者らが最近報告した二環性シアル酸供与体を用いた完全なα選択的グリコシド化法を基に、糖脂質にシアル酸を直接的に導入する合成法を検討した。その結果、モデル実験において、極めて高収率にてガングリオシド骨格の構築が可能であることを見出し、新規合成法の有用性を証明した。2.ケミカルプローブ合成のためのシアル酸修飾法の確立1の成果を基に、次にシアル酸に対する化学修飾を試みた。ガングリオシド骨格構築後に二環性シアル酸が有する架橋部を化学選択的に開裂することで、多様なアミノ基修飾体への誘導を可能にした。さらに、9位の水酸基をアミド基で修飾した二環性シアル酸供与体を糖脂質のシアリル化反応に用いることで、蛍光ガングリオシドプローブへの誘導も可能であることを実証した。次年度は本手法を用いて、癌関連糖脂質の蛍光プローブ及び分子捕捉用プローブの合成を達成する。
2: おおむね順調に進展している
本研究において最も重要なガングリオシドの化学合成法を改良したことにより、研究遂行上の課題を解消することができたと考えている。当初の計画通り合成を進めており、次年度には目的分子の合成を達成できると考えている。以上のことから、おおむね順調に進展していると考えている。
癌関連糖脂質の分子プローブの合成を達成する。合成完了後は当初の研究計画に従い、細胞上での1分子イメージング、光架橋反応による親和性タンパク質の同定を実施する。
今年度は、39万円の次年度使用額が生じた。これは、新型コロナウイルス感染症の影響により、主に旅費の使用計画に変更の必要性などが生じたためである。繰越分は次年度の消耗品(蛍光色素)の購入費用に充当させる。研究成果は順調に得られているため、研究計画や予算計画の大幅な変更は必要ないと考えている。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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