本研究課題は、癌細胞上に存在する癌関連糖脂質(ガングリオシド)を標的に、その効率的合成法の開発、さらに分子プローブを利用した癌細胞の増殖・浸潤の分子基盤の解明を目的としている。本年度は当初の計画に基づいて、ガングリオシドプローブの化学合成と1分子イメージングに取り組み、以下の成果を得た。 1.蛍光ガングリオシドプローブの合成 昨年度確立した、糖脂質へシアル酸を直接導入する新規ガングリオシド合成法を用い、蛍光ガングリオシドプローブの合成を行った。まずは9位の水酸基をトリフルオロアセトアミド基で置換した二環性シアル酸と糖脂質ユニットを合成した。糖脂質ユニットは難溶性の問題の対策として、水酸基をTBBz基で保護した設計とした。実際にこの糖脂質ユニットは低温においても有機溶媒に良く溶解し、二環性シアル酸によるグリコシル化反応を行うことでガングリオシド骨格を高収率にて得た。続いて二環性シアル酸の架橋部の化学選択的開裂、アミノ基修飾後に脱保護反応を行うことで、シアル酸9位にアミノ基を有するガングリオシドへと誘導した。最後に、蛍光色素をアミド結合を介して導入し、癌関連糖脂質の蛍光プローブの合成を達成した。 2.蛍光ガングリオシドの機能評価及び1分子イメージング 合成した蛍光プローブの細胞膜上での機能評価を行った結果、天然のガングリオシドと同様に脂質ラフト親和性を示すことを確認した。続いて、1分子イメージングを行った結果、ガングリオシド同士が頻繁に共局在する様子を捉えることに成功した。
|