研究実績の概要 |
ヘルパーT 17(Th17)細胞産生性インターロイキン17(IL-17)やIL-23が関節リウマチや実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の病因であることが報告されており、治療薬の標的としてTh17分化制御の重要性が示唆されている。本研究では北里大学の天然物由来のライブラリーからTh17分化阻害剤を同定し、Th17が病因の疾病に対する治療薬の基盤を作ることを目標としている。細胞が様々なストレスに曝されるとeIF2αのリン酸化を介した統合的ストレス応答(ISR)が誘導される。ISRキナーゼにはHRI,PKR,PERK,GCN2の4つが知られている。HalofuginoneはGCN2-eIF2α-ATF4シグナルを活性化、Th17分化を阻害、EAEの病態スコアを改善することが報告された。しかし、その他のキナーゼを介した強力なTh17分化制御は未解明であるため、GCN2以外のISRキナーゼを介したTh17分化阻害を目的とした。ISRレポーター細胞を用いたHTSより、ISRを活性化するNigericin(Nig)を同定した。NigによるISR活性化は、ミトコンドリア膜電位の変化によるミトコンドリアストレスを感受したOMA1-DELE1-HRIシグナルによって活性化されていることを明らかにした。マウスの脾臓やヒトの血液からCD4+ T細胞を抽出し、Th17へ分化させた。対照群はIL-17分泌が検出されたが、分化誘導時にNigを共投与した群ではIL-17の分泌が抑制された。EAE病態および乾癬誘導実験においても、Nigにより病態が改善された。Nigの標的を同定するとこで、詳細な作用機序解明を可能にし、Th17関連疾患の治療薬開発の基盤となりえることが示唆された。
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