研究課題/領域番号 |
20K15417
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
朝光 世煌 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 訪問研究員 (70849091)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マウス脳 / 中枢神経 / 核酸高次構造 / グアニン四重鎖 |
研究実績の概要 |
生体内のRNAは、連続したグアニンを豊富に含む配列において4本の鎖からなる四重鎖構造(G4RNA)を形成することが知られており、RNAプロセシング・翻訳プロセスの多様性に影響を与える因子であることが示唆されている。G4RNAはがん・遺伝子疾患・神経疾患の病態に関与することが指摘されている一方で、中枢神経系における生理機能の大部分は未だ解明されていない。 本年度は昨年度に開発した、遺伝子工学的応用可能なG4RNAプローブを基盤とし、マウス脳で発現するG4含有mRNAとその結合タンパク質の解析を行った。同定したG4含有mRNAをin vitro転写によって合成し、水溶液バッファー内における挙動を解析した結果、G4構造依存的に球状の液滴が形成されることがわかった。また、G4構造に結合した際に蛍光を発する分子プローブを用いることで液滴内にG4構造が保たれていることを確認し、G4構造が液滴形成・維持に直接的に関与していることがわかった。さらに、このG4構造に結合する新規G4RNA結合タンパク質が液-液相分離現象を引き起こすことを新たに発見し、G4RNAがこのタンパク質の液-液相分離を促進させることを見出した。これらのG4RNAとG4RNA結合タンパク質の相分離に関する特性は、細胞内で形成される相分離構造体の一つであるストレス顆粒の組織化・維持に重要であることを細胞株での実験やインフォマティクス解析により実証した。これらの結果は、次年度に予定しているマウス脳・マウス初代神経細胞を用いたG4RNAの機能解析に繋がる成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主な研究内容は、マウス脳における新規G4含有mRNAのin vitro・in cellulo機能解析、およびその結合タンパク質のG4構造依存的な物性・機能の解析であり、その両項目において一定の研究成果を創出した。次年度に予定しているマウス脳・マウス初代神経細胞におけるG4RNAの機能解析を実行可能な段階まで研究が進んたことを踏まえ、おおむね順調に進展していると評定した。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro・in celluloの機能解析が当初の見通し通りに進展した。これらの成果を踏まえ、マウス脳・マウス初代神経細胞を用いた神経生理学的な解析を実施し、G4RNAの中枢神経系における役割の解明を目指す。
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