研究課題
研究代表者は、これまでに生体高分子のリジン残基側鎖のアミノ基に対して速やかに化学修飾できる理研クリックを用いて、タンパク質や抗体に対して様々な機能性分子を効率的に標識することに成功している。一方で、理研クリックのための不飽和アルデヒドに種々の機能性分子を導入する方法として、テトラジンとtrans-シクロオクテンを用いたクリック反応を用いていたが、反応性官能基を多く持つ機能性分子にそれらの官能基を導入する必要があった。また、テトラジンなどの官能基を数段階の合成にて調製する、もしくは高価な市販試薬を購入しなければならなかった。これらの課題を解決して理研クリックを用いた生体分子標識をより効率化することができると考えた。本研究では、まず二つの不飽和アルデヒドを持つクリック標識プローブを開発して、それを用いて二つの異なる反応性の理研クリックによる効率的なドラッグ-生体高分子複合体の合成を行う。さらに機能を評価し、実用性を示すことを目指す。今年度の研究では、まず理研クリック不飽和アルデヒドと、よりマイルドな反応性の不飽和アルデヒドを結合した「ジアルデヒドプローブ」を設計し、合成を行った。具体的には、フェニル基を持つ不飽和アルデヒド(理研クリックアルデヒド)のアルコール体と、プロピル基を持つ不飽和アルデヒドのアルコール体をそれぞれ合成し、アジドとアルキンのクリック反応を用いてカップリングして、ジアルデヒド前駆体のジアルコールを得た。そして、これまで不飽和アルデヒドプローブの合成に用いてきたDess-Martin酸化を用いて、ジアルデヒドを合成することができた。また、フェニル基を持つ不飽和アルデヒドに関して、鈴木カップリング反応を用いる経路に改良することで、より量的合成に適したルートを確立することに成功した。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan
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Bioorganic & Medicinal Chemistry
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