研究課題/領域番号 |
20K15426
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
赤松 明 関西学院大学, 生命環境学部, 助教 (10802225)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミヤコグサ / 根粒菌 / AON / NIN / フォスファチジルイノシトール |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、AON欠損変異体であるhar1およびtmlとplpとの二重変異体を使用して根粒菌の感染試験を実施した。この結果、PLPによる根粒菌感染抑制機能は、AON非依存的であることが明らかとなった。その一方で、遺伝子発現解析から、近年明らかにされつつある転写因子NINを介したローカルな根粒菌感染抑制システムへの関与が示唆された。また、GEFに関しても、PLPと同様の機能を有していることが示唆され、遺伝子発現解析からは、GEFの下流でPLPが機能している可能性が考えられた。 蛍光タンパク質マーカーを利用した細胞膜上のPIPの動態の観察には、PIPの種類に応じた複数のマーカーを用いて観察を行っている。根粒菌感染時の根毛細胞での観察では、根毛内でのPIPの動態が明らかになりつつあるが、定量性などの問題により、明確な結論が得られていない。引き続き、詳細な解析を続けていく。 GEFに対する相互作用因子の同定のため、共免疫沈降及び質量分析による解析を計画している。GEFにタグを付加したタンパク質を発現した形質転換体の作出は順調に進行し、現在までにタンパク質抽出用の形質転換体の作出を終えている。タンパク質抽出の条件検討が終了次第、共免疫沈降を行い質量分析による解析を行っていく予定である。 計画していた研究の他に、根粒菌以外の共生菌や病原性の微生物に対する感染に対し、PLPがどのように寄与しているかを検証を行うこととした。本年度は、感染のための実験系の確立を行った。これまでに予備実験が終了し、今後、本格的に感染試験を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始当初、PLPによる根粒菌感染抑制は植物体の地上部を介したAON抑制システムの一部であると予想していた。しかし、本年度の研究結果より、予想に反し異なる経路によるものであることが明らかとなった。この結果は、微生物が植物細胞に侵入するメカニズムを明らかにするための新たなヒントとなり得る結果であり、根粒共生の成り立ちを解き明かすヒントにもなり得ると期待している。また、当初の計画には含まれていなかった根粒菌以外の微生物との相互作用にPLPが関与するかどうかの検証を行うための準備も順調に進行しており、次年度の解析結果が非常に期待されるものとなっている。 相互作用解析や細胞内のPIPの動態の観察も、順調に推移しており、計画通り次年度のうちに結果を得られるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、計画通りGEFと相互作用する因子を質量分析により明らかにし、その詳細な検討を行っていく予定である。また、PIPの動態に関しては、定量性に問題があるため、定量の指標となるインターナルコントロールを同時発現できる系の構築を目指している。これらを使用して引き続き、根粒菌感染時のPIPの動態の詳細を解析していく予定である。さらに、根粒菌以外の微生物との相互作用解析も行っていく。上手く解析を進めることができれば、これら微生物を感染させた際の網羅的遺伝子発現解析にもチャレンジしたいと考えている。 当初の計画通り、根粒共生におけるPLPの機能について論文としてまとめ、投稿する準備を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、タンパク質の検出のために購入を予定していた機器を別予算にて購入できたため、物品費に差額が生じた。また、人件費に対する支出も、別予算より支出できたため、差額が生じた。そこで、これらの予算を、新たに計画している網羅的遺伝子発現解析の費用に支出したいと考えている。
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