• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

糸状菌における細胞融合を誘導する転写制御機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K15429
研究機関東京大学

研究代表者

片山 琢也  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (70792191)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード糸状菌 / 細胞融合 / 転写制御
研究実績の概要

本研究では糸状菌における細胞融合制御に関与する転写制御機構の解明を目的とし、Aspergillus oryzaeにおいて、転写因子AoSte12による制御機構の詳細な解析とAoSte12非依存的な機構の探索を行った。
これまでに、機能未知タンパク質FsiAの存在に依存したAoSte12のリン酸化がAoSte12の機能が変化させる可能性を示していた。本年度、AoSte12の切り縮めや候補アミノ酸残基のアラニン置換により、3箇所の被リン酸化残基の候補を得た。さらに、これらのアミノ酸残基の変異型AoSte12が野生型のAoSte12とは異なる振る舞いをすることを示唆する結果が得られている。また、AoSte12のより詳細な解析のため、AoSte12のChIP-seq解析を行い、AoSte12の結合部位の候補が得られた。
AoSte12非依存的に細胞融合を調節する転写制御機構を発見するため、当初の予定では薬剤耐性遺伝子を利用した細胞融合欠損変異株のスクリーニングを行う予定であった。しかし、細胞融合検出系において想定していた薬剤耐性が発揮されず、栄養要求性を利用した系に転換した。これに関連してスクリーニング対象を、糸状菌では高度に保存されているが、酵母には保存されていない転写因子とした。これまでに必要な転写因子欠失株を大部分作製できている。また並行してスクリーニングも進めており、複数の候補が得られている。
Ste12の糸状菌における機能の共通性を検討するため、これまで細胞融合に必須とされていたAspergillus nidulansのSTE12オルソログであるsteAについて解析した結果、steAがA. oryzaeと同様に細胞融合には必須ではないことが示された。これはSte12依存および非依存の細胞融合制御機構がA. oryzae以外の糸状菌にも保存されている可能性を示すものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

AoSte12の被リン酸化部位を絞り込むことができたことは当初の予定通り進展した部分である。また、これまで困難であったChIP-seq解析が可能となったことは、今後の進展が期待される部分である。一方、細胞融合に関与する転写因子の探索については計画の変更を迫られたことから、やや進展が遅れているが、スクリーニングが終了する目処が立っており、2021年度に得られた候補の解析が可能である。以上のことから、本研究課題は概ね順調に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

AoSte12の被リン酸化アミノ酸残基の変異体について、細胞融合効率や細胞融合関連遺伝子の転写に対する機能を詳細に解析することで、FsiAに依存したAoSte12リン酸化の意義を明らかにする。また、AoSte12欠損株におけるRNA-seq解析を行い、2020年度に行ったChIP-seq解析の結果と比較し、AoSte12の標的遺伝子を同定する。そして、AoSte12のリン酸化が、標的遺伝子のプロモーターへの結合に対してどのような影響を与えるか検討する。
これまでに得られた新規の細胞融合を制御する転写因子については、スクリーニングの再現性を確認し、さらなる絞り込みを行う。選抜された候補に対しては、ChIP-seq解析、RNA-seq解析を行うことで、これらの転写因子がどのように細胞融合を制御しているかを明らかにする。
上記解析で得られたSte12に依存した制御機構、およびSte12以外の転写因子の細胞融合に対する機能が他の糸状菌で保存されているかどうか明らかにするため、A. nidualnsにおいてもSte12リン酸化のその機能に対する影響を検討し、また相当する転写因子の欠失株の解析を行う予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Novel Fus3- and Ste12-interacting protein FsiA activates cell fusion-related genes in both Ste12-dependent and -independent manners in Ascomycete filamentous fungi2021

    • 著者名/発表者名
      Takuya Katayama, Ozgur Bayram, Taoning Mo, Betim Karahoda, Oliver Valerius, Daigo Takemoto, Gerhard H Braus, Katsuhiko Kitamoto, Jun-ichi Maruyama
    • 雑誌名

      Molecular Microbiology

      巻: 115 ページ: 723-738

    • DOI

      10.1111/mmi.14639

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Cellular dynamics upon cell fusion in the co-culture between compatible/incompatible strains in the industrial filamentous fungus Aspergillus oryzae2021

    • 著者名/発表者名
      Lu Chan, Mori Noriko, Katayama takuya, Saito Ryota, Iwashita Kazuhiro, Maruyama jun-ichi
    • 学会等名
      日本農芸化学会
  • [学会発表] 麹菌Aspergillus oryzaeにおける転写因TrsAとTrsBによる菌核形成制御機構の解析2021

    • 著者名/発表者名
      皆川春香、片山琢也、岡大椰、小川真弘、兒島孝明、中野秀雄、小山泰二、北本勝ひこ、丸山潤一
    • 学会等名
      日本農芸化学会
  • [学会発表] 麹菌Aspergillus oryzaeが有する特異的な染色体領域の発見とゲノム編集技術 CRISPR/Cas9 による大規模欠損2021

    • 著者名/発表者名
      知見悠太、山口勝司、齋藤直也、片山琢也、重信秀治、丸山潤一
    • 学会等名
      日本農芸化学会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi