研究課題/領域番号 |
20K15430
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
江口 友佳子 金沢大学, 男女共同参画キャリアデザインラボラトリー, 特任助教 (60838506)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 原核細胞オルガネラ / オルガネラ内部環境制御 / 磁性細菌 / バイオミネラリゼーション |
研究実績の概要 |
磁性細菌は膜小胞の中に磁鉄鉱結晶を生合成することで、地磁気を感知するための原核細胞オルガネラ「マグネトソーム」を形成するが、その内部環境の制御機構は未解明である。本研究では、磁性細菌のマグネトソーム内部のpHがどの蛋白質によってどのように制御され、pHの制御が磁鉄鉱の生合成にどのように寄与するかを明らかにし、マグネトソームの内部環境制御機構の一端を解明することを目的とする。 本年度は、マグネトソーム内部のpH制御に関わると考えられる輸送体蛋白質MamNおよびマグネトソーム表面蛋白質MamAに着目した。これらの蛋白質の機能を解析するため、まず磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1においてmamN欠失株を作成した。次に、作成したmamN欠失株および既に保有していたmamA欠失株において、生細胞pH蛍光イメージング法によりマグネトソーム内外のpHを測定するため、マグネトソーム局在蛋白質であるMms6およびMamCとpH感受性蛍光蛋白質E2GFPの融合蛋白質(Mms6-E2GFP、MamC-E2GFP)の発現系を構築した。構築した発現系において、Mms6-E2GFPの発現によりマグネトソーム内部に、MamC-E2GFPの発現によりマグネトソーム外部にE2GFPを局在させる。顕微分光器を装備した全反射蛍光顕微鏡によりMms6-E2GFPおよびMamC-E2GFPを発現させたmamN欠失株とmamA欠失株の蛍光スペクトルを測定することで、それぞれの欠失株におけるマグネトソーム内外のpHを測定し、MamNとMamAのpH制御における機能を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において本年度に予定した①マググネトソーム内pH制御の候補蛋白質欠失株の作成および②生細胞pH蛍光イメージング法による候補蛋白質の機能解析を実施した。当初の研究計画通りに進行しており、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、生細胞pH蛍光イメージング法を発展させ、MamN、MamAの機能を更に詳しく解析する。 具体的には、生育段階や培養条件の違いによるマグネトソームのpH、mamA欠失株およびmamN欠失株とWTとで比較する。生育段階によるマグネトソームのpH変化を調べるため、磁性細菌を培養しながら経時的にpHを測定する方法を確立する。また、マグネトソーム内の磁鉄鉱の鉄源である培地中の鉄の濃度や、磁鉄鉱の生合成に関連する脱窒の基質である硝酸塩の濃度などの培養条件を変化させ、マグネトソーム内のpHがどのように変化するかを検証する。 さらに、MamNがどこで機能しているかを調べるため、mamN欠失株においてMamNと蛍光蛋白質の融合蛋白質を発現させ、MamNの局在を調べる。細胞内のどの部分のマグネトソームのpHに変化が生じるかを調べ、MamNの局在と比較することで、MamNのpH制御における詳細な機能を検証する。そのために、生細胞内でpH分布を可視化するためのイメージング法の開発を試みる。
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