磁性細菌は膜小胞の中に磁鉄鉱結晶を生合成することで、地磁気を感知するための原核細胞オルガネラ「マグネトソーム」を形成するが、その内部環境の制御機構は未解明である。本研究では、磁性細菌のマグネトソーム内部のpHがどの蛋白質によってどのように制御され、pHの制御が磁鉄鉱の生合成にどのように寄与するかを明らかにし、マグネトソームの内部環境制御機構の一端を解明することを目的とする。 2023年度は、2022年度に引き続き、磁性細菌を培養しながら経時的にpHを測定する方法の検討を行った。透過波長域の異なる2種類の蛍光フィルターを用いて蛍光イメージを取得し、蛍光強度の比をマッピングすることで視野内の細胞のpHの分布を調べることができれば、経時的な測定が容易になると考え、実験系の構築に取り組んだ。 研究期間を通じて、マグネトソーム内部のpH制御に関わると考えられる輸送体蛋白質MamNおよびマグネトソーム表面蛋白質MamAに着目し、それぞれの欠失株におけるマグネトソーム内外のpHを測定に向けた基盤を構築した。今後は、測定方法の改善を図るとともに、pH制御にとどまらず、酸化還元電位やその他の生体分子の動態等を解析する手法も検討する。
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