研究課題/領域番号 |
20K15434
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
緋田 安希子 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 助教 (70825760)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 走化性 / センサータンパク質 / リガンド |
研究実績の概要 |
青枯病菌は22の走化性センサー(mcp01~mcp22)を保有するが、このうちリガンドが明らかとなっているのは8つのみであった。各センサータンパク質が何を感知し、そしてそれぞれをいつ使うのかを知ることは、本細菌の環境中での挙動を理解する手がかりになると考えられる。 昨年度の解析で、リガンド未知センサーのうちMcp09がアガロース加水分解物成分を認識することを発見した。今年度は当該センサーの具体的なリガンドの特定を試みた。アガロースは多糖であるため、当該加水分解物の薄層クロマトグラフィーによる分画・分析や、糖類を中心とした走化性解析を実施したが、Mcp09のリガンドに関する有力な手がかりは得られなかった。 そこで、Mcp09の推定リガンド結合領域(LBD)を大腸菌を用いて過剰発現し、His-tagにより精製したのち、in vitroでのリガンドスクリーニング解析(Thermal shift assay)に供した。190種類の化合物に対して解析したところ、ギ酸がMcp09の強い走化性リガンドであることを突き止めた(アガロース加水分解物には糖の脱水と再水和により生成したギ酸が含まれていたと思われる)。同時に、本手法が走化性センサータンパク質のリガンド特定の有効な手段であることが確認された。 上記解析に加え、今年度はさらに22走化性センサーをいつ使うのか、各センサー遺伝子の発現解析も実施した。宿主植物であるトマト根の存在下/非存在下における22センサー遺伝子の発現を定量的リアルタイムPCRを用いて解析したところ、既に植物への感染に重要であることが判明しているMcp14に加え、新たにMcp15、Mcp21も植物存在下で発現が向上することが明らかとなった。これら走化性センサーのリガンドはまだ特定できていないが、これらによる走化性もまた植物感染時に重要な役割を担うことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでリガンドが不明であった走化性センサータンパク質Mcp09についてリガンド特定に成功したが、当初予定していた手法である複合試料からのリガンドの絞り込みは、成分の分画・分析が課題となり、困難であると考えられた。それがネックとなり、残る12の走化性センサーについては未だリガンド特定に至っておらず、研究の進行がやや遅れている。しかし、今回新たにThermal shift assayによるリガンドスクリーニングが有効であることが確認できたため、今後はより効率的なリガンド特定が行えることが期待される。 また、22走化性センサー遺伝子の発現解析については、解析の基盤が確立でき、実際に植物存在下における発現結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
走化性センサータンパク質のリガンド特定について、当初予定していた方法では困難と予想されたため、残る12のリガンド未知センサーについては、複合試料を用いて各センサーの機能性を確認し、機能的なセンサータンパク質について、大腸菌で発現し精製した後、Thermal shift assayを利用したリガンドスクリーニングに供すことで特定を試みる。 また、センサー遺伝子発現については、引き続き植物存在下での発現を解析するとともに、さまざまな化合物存在下での発現も解析していくことで、どのような環境でどのセンサーを必要としているのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
前記のとおり、当初計画していた手法でのリガンド特定が困難であったため、手法を変更したことにより生じた。繰り越し分は次年度に消耗品の購入に使用する。
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