青枯病菌は22の走化性センサー(Mcp01~Mcp22)を保有するが、2つの走気性センサーと6つの化合物センサー以外は機能未知であった。これらセンサータンパク質のリガンドを解明することは本細菌の環境中での挙動を知る有力な手掛かりとなると考えられる。昨年度までの解析で新たに3つのセンサータンパク質のリガンドを明らかにした。最終年度は、さらなるセンサータンパク質の特性化を進めるべく、In vitroでのリガンドスクリーニング(Thermal shift assay)を試みた。 リガンド未特定の10種のセンサータンパク質について、pET28bをベースとして推定リガンド結合領域(LBD)を発現するプラスミドを構築し、大腸菌を用いて過剰発現した。うまく発現できたものについてはHis-tagにより精製し、化合物プレートを用いたThermal shift assayによりリガンドスクリーニングを試みた。しかし、ものによって可溶化状態での発現・抽出が困難であったり、可溶化・精製がうまくできても、スクリーニング時に問題が生じたりと、思うような解析が行えず、新たなリガンドの特定には至らなかった。 このように当初の目標であったすべてのセンサータンパク質のリガンド解明を本研究期間中に達成することはできなかったが、解析の基盤は構築できたため、今後発現・解析条件の検討していくことで、本細菌におけるすべての走化性センサーのリガンドが特定できるものと思われる。また、本研究期間中にはリガンドの特定以外にも植物存在下で発現が向上するセンサーの特定にも成功しており、この結果と今後得られるであろうリガンド情報を照らし合わせて考察していくことで、青枯病菌の環境中での挙動(特に植物感染における挙動)について考察することが可能になると期待される。
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