研究課題/領域番号 |
20K15437
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
長谷部 文人 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (30781801)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メチオニン / 生合成 / 活性制御 / フィードバック阻害 / タンパク質間相互作用 |
研究実績の概要 |
2020年度は、『MetWがMetXのフィードバック阻害に関与する』という仮説を検証するために、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来のMetW(PaMetW)とMetX(PaMetX)を対象として研究を行った。P. aeruginosa NBRC 106052のゲノムDNAを購入し、これを鋳型にPCRを行い、PametWとPametXをpETDuet-1やpRSFDuet-1に導入したプラスミドを作製した。この際、PaMetXはN末端にHisタグが付加するように設計した。作製したプラスミドをE. coli BL21(DE3)に導入し、発現・誘導を行い、Niカラムを用いて組換え酵素の取得を行った。 組換えPaMetXを用いてin vitro 反応を行い、反応溶液をLC-HRMSを用いて分析した。その結果、反応産物であるO-Succinyl-L-Homoserineに相当する顕著なイオンピークを検出した。メチオニン代謝関連物質であるL-cystathionine, L-homocysteine, L-methionine, SAM, SAHを阻害剤候補として検討した結果、それらの比活性の顕著な減少は観測されなかった。 共発現したPaMetXとPaMetWを用いてプルダウンアッセイを行うことで、これらが相互作用することを明らかにした。取得した組換えPaMetXとPaMetWを用いてin vitro反応を行った結果、PaMetWが共存することでその比活性が約600倍になること、およびSAH添加条件においてのみ、その活性が阻害されることを明らかにした。さらに、PaMetWにおいてSAHの認識に関与すると推測されたグリシンリッチな配列をアラニンに置換した組換え体を作製し、in vitro反応をした結果、SAHによる阻害効果が緩和されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、PaMetWがPaMetXの活性化/阻害に重要な制御タンパク質であること、PaMetWがSAHを認識することでフィードバック阻害がかかることを明らかにできた。このことから、緑膿菌においては『MetWがMetXのフィードバック阻害に関与する』ことを示すことが出来たと考えている。これまでの内容をまとめて論文化し、Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry Volume 85, Issue 2, 351-358 (2021)に掲載された。 PaMetWとPaMetXとの相互作用に重要な残基/領域の探索のために、約200アミノ酸残基からなるPaMetWのアラニン置換体をこれまでに107種作製しており、アラニンスキャニングに必要な準備は順調に進展している。また、PaMetWのC末端欠損体を4種作製出来たことから、これらを用いることでPaMetW側において相互作用に重要な領域を明らかにできると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に準備したPaMetW変異体(PaMetW*:アラニン置換体やC末欠損体)を用いて、PaMetWの機能(PaMetXとの相互作用や比活性の制御)について重要な領域・残基を探索する。PaMetXとの相互作用に重要な領域・残基の探索を行うために、大腸菌BL21(DE3)を用いて共発現させた組換えPaMetW*(no-tag)とPaMetX(His-tag付加体)をNi-NTAカラムに供して精製し、精製画分をSDS-PAGEに供し、PaMetW*とPaMetXのバンド強度を比較することで相互作用の評価を行う予定である。比活性の制御に重要な領域・残基の探索は、吸光度計やHPLCを用いてPaMetW*/PaMetXの比活性を測定し、それらを比較することで行う予定である。 また、緑膿菌以外の系統学的に異なる属・種の菌由来のMetWとMetXについても、比活性の比較を行うことで、緑膿菌と同様にMetXの活性制御に関与するかについての検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請当時より予算請求額が減額され、さらに大学の異動やコロナ禍により、当初予定していた額では、次年度の研究に悪影響が出ると考えられたため。 翌年度分の助成金と合わせて、備品や消耗品の購入に充てる予定である。
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