• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

新規の増殖因子としての細胞外鉄イオウクラスターと微生物との相互作用の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K15443
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

五十嵐 健輔  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90759945)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード環境微生物 / 生理活性物質 / 硫化鉄 / 鉄イオウクラスター / 分離培養 / 共培養
研究実績の概要

本研究では、生物がもつ鉄イオウクラスターに部分構造が類似している硫化鉱物(磁硫化鉄, Fe3S4)の存在下で増殖が変化する微生物株の取得と生理解明を行うことで、増殖促進因子としての細胞外鉄イオウクラスターの機能と微生物代謝への影響を解明することを目的とする。
前年度は、細胞外鉄イオウクラスターの供給源となるグライガイト存在下で増殖促進を示す株を環境中(主に中性中温環境)から複数取得することに成功した。本年度は、これら単離株(主にFirmicutes門に属する株)を対象にして、他の微生物から供給された鉄イオウクラスターの利用能を評価する実験を新たに構築した。カルチャーコレクションから取得した多様な微生物株を用い、単離株との共培養、および培養上清の添加による増殖への影響を評価した。その結果、共培養条件では明瞭な増殖促進が観察されなかったものの、培養上清の添加条件では、特にいくつかのメタン菌の培養上清を用いた場合、弱いながらも促進効果が観察された。
また、本年度は微生物の単離源をアルカリ環境、そして高温環境に拡大し更なる菌株の取得を試みた。その結果、グライガイト存在下で増殖促進を示す複数の株をアルカリ性鉱泉(pH8-9)由来の微生物群集から、そして堆肥(約60-70℃)由来の微生物群集から取得することに成功した。新規取得株は主にFirmicutes門、Proteobacteria門、そしてFusobacteria門に属し、生理解明の対象となる微生物株の多様性を拡大できたと期待される。
現在、これらの菌株を用いた共培養実験、および比較ゲノム解析のためのゲノムシークエンシングの準備段階にある。更に微生物間での細胞外鉄イオウクラスターの授受機構を解明するため、培養液に含まれると期待される鉄イオウクラスター様構造の分析を予定している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は昨年度に引き続き、細胞外鉄イオウクラスターに応じて増殖を変化させる微生物株の分離培養に注力して研究を実施した。これまでの主な成果として、そのような性質をもつ微生物株を多様な自然環境から取得するに至っている。しかし、当初予定していた動物の消化管由来の微生物群集に対してはグライガイト存在下で増殖促進を示す株の取得には至っていない。また、実験材料調達のためのサンプリング機会、および各種化学分析を行うための機器利用の機会が大きく制限されたことから、当初の予定より進捗が遅れている。

今後の研究の推進方策

これまでの研究で、グライガイト存在下で増殖促進を示す複数の微生物株の取得に至っており、今後は詳細な比較ゲノム解析を実施できると期待される。また、いくつかの単離株を対象とした網羅的遺伝子発現解析を行い、鉄イオウクラスターの合成あるいは取込みに関連する遺伝子変動が実際に起こっているかを検証する予定である。更には、寄生性細菌にも研究対象を広げ、宿主からの鉄イオウクラスター取得機能に着目した研究を行う方針である。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、サンプリング機会が大幅に制限されたことなどから、当初想定していた経費(主に旅費)について未使用額が生じた。また、当初予定していた外注分析などを手法の改良により自ら行うことで経費が削減された。
繰り越し分の経費はDNA/RNAシーケンシングのための消耗品や外注分析費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 固体触媒により過酸化水素フリーな平板培地調製を可能にする手法の確立2021

    • 著者名/発表者名
      五十嵐 健輔、渡辺 統之、北川 航
    • 学会等名
      日本微生物生態学会第34回大会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi