研究課題/領域番号 |
20K15444
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
平岡 聡史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生命理工学センター), 研究員 (70824423)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 海洋細菌叢 / DNA化学修飾 / メタゲノム解析 / メタエピゲノム解析 / バイオインフォマティクス |
研究実績の概要 |
細菌・古細菌において、DNAの骨格や塩基にメチル化等の化学修飾が施される「DNA化学修飾」という現象(エピゲノム)が広くおきており、生理学的に重要な役割を担っていることが知られている。しかしながら、多様な未培養系統群を含む環境微生物のDNA化学修飾の網羅的な観測は技術的に困難であり、その普遍性や多様性、生態学的な意義は未知である。一方、研究代表者はこれまでに、PacBioシーケンサを活用した環境細菌叢の系統網羅的なDNA化学修飾観測技術(メタエピゲノム解析)を確立した(Hiraoka et al. Nat. Commun. 2019)。本研究課題では、表層から深海に至る複数深度の海洋細菌叢を対象にメタエピゲノム解析を実施し、海洋細菌群集が持つDNA化学修飾機構の多様性を検証することを目的としている。 昨年度までに、太平洋沖合の外洋表層海洋水から得られた細菌叢サンプルに対して、ショットガンゲノムシーケンシングを行い、配列データの解析を進めてきた。本年度は、昨年度に引き続き、得られた配列データの解析を行ったほか、大腸菌を用いた組み換え実験の結果を纏めた。そして、得られたDNAメチル化酵素遺伝子配列やゲノム配列に基づいた進化系統学的解析を実施し、解釈を試みた。具体的には、海洋中に最も多く存在する微生物系統群であるAlphaproteobacteria綱に着目してより詳細なゲノム解析を行ったところ、この系統群では進化の途中でDNAメチル化酵素の認識モチーフが変化し、その変化にあわせてゲノム全体の塩基出現パターンも変化する傾向が見出された。これらの結果から、エピゲノムは微生物の進化や生態などに広範な影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、得られた結果を原著論文として纏め、査読付き国際誌に投稿し出版した(Hiraoka et al. Nucleic Acids Res. 2022)。今後はより発展的な研究対象として、外洋海洋水とは異なる海洋環境サンプルを対象に、新たに解析を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、より発展的な研究として、外洋海洋水とは異なる海洋環境や陸上由来の環境試料に由来する微生物サンプルを対象に、メタエピゲノム解析を進めていく予定である。現在までに、深海堆積物を用いたDNA抽出とゲノムシーケンシングを実施しており、予備的なデータを得られている。今後、実験手法の洗練化や詳細なデータ解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、参加を予定していた学会や研究会の全てがオンライン開催となり、旅費の支出額が予定よりも大幅に少なくなったため、次年度使用額が生じた。本費用は次年度において、現在実施中の発展的研究に必要な実験消耗品の購入やゲノムシーケンシングの委託解析、データ解析関連備品の購入に充当する予定である。
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