研究課題/領域番号 |
20K15447
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 俊也 東北大学, 工学研究科, 学術研究員 (00825226)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イオンチャネル / 植物 / リン酸化酵素 / 膜タンパク質 / 電気生理学 / カルシウム / 質量分析 |
研究実績の概要 |
【①ホスホプロテオミクス解析】当初予定していた、孔辺細胞プロトプラスト(以下GCP)を用いたホスホプロテオミクス解析によるストレス関連チャネル・キナーゼの一挙同定は、ストレス試験に使用可能なGCPを調製することが困難であるため難航している。この実験を困難たらしめている点は、ターゲットとなるタンパク質を絞らず、かつGCP調整後にストレス付与を行うという点である。しかし、後述する卵母細胞の実験で気孔のストレスシグナルの使い分けに重要と思われるアニオンチャネルSLAC1のアミノ酸残基が発覚した。このため、SLAC1にターゲットを絞り、ペプチドタグ付SLAC1を植物体から精製しLC-MSにてリン酸化部位の同定を行う実験の準備を進めている。 【②電気生理測定】気孔アニオンチャネルSLAC1を活性化する複数のキナーゼに対し、卵母細胞を利用したイオンチャネル精製およびLC-MS/MSによりSLAC1のリン酸化部位を同定した。その結果、当初の予想通りキナーゼの種類によって異なる部位に対するリン酸化(これまで報告されていなかった部位も含む)が同定された。また、これらのキナーゼの遺伝子欠損植物において、気孔における細胞内Ca2+濃度の上昇の仕方によってキナーゼごとに応答が異なるようなデータが得られた。この現象がストレスの種類に応じたキナーゼの使い分けの鍵なのではないかと考え、新たに解析を行っていく予定である。 【③蛍光プローブ】当初本実験で使用予定であった蛍光プローブは、実験データの不安定性が改善できずいまだ実用化には至っていない。一方、気孔イオンチャネルの阻害剤スクリーニングにより、一般的な植物ホルモンの作用におけるCa2+濃度上昇ピークとは異なる形のピークを誘発する化合物を発見した。今後この化合物をヒントにCa2+濃度の上昇の仕方とストレス・キナーゼの種類の対応関係を見出していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ストレス試験に使用可能なGCPを調製することが当初予想していたよりも遥かに困難であるため、ホスホプロテオミクス解析が難航している。 また、蛍光プローブも実験データの不安定性が改善できずいまだ実用化には至っていない。 一方、卵母細胞および植物体を用いた実験の結果、本研究の当初の目的であった「ストレスの種類に応じたキナーゼの使い分け」の中核をなしていると予想される細胞内Ca2+が関わる新たなメカニズムが徐々に明らかになってきており、当初の計画とは異なるが、孔辺細胞Ca2+濃度の変化の仕方とキナーゼの対応関係も探る必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
実績の項目で述べた通り、卵母細胞の実験で気孔のストレスシグナルの使い分けに重要と思われるアニオンチャネルSLAC1のアミノ酸残基が発覚した。このためSLAC1にターゲットを絞り、ペプチドタグ付SLAC1を植物体から精製しLC-MSにてリン酸化部位の同定を行う実験の準備を進めている。 また、植物体を用いた実験により、気孔における細胞内Ca2+濃度の上昇の仕方によってキナーゼごとに応答が異なるようなデータが得られたため、今後Ca2+濃度の上昇の仕方とストレス・キナーゼの種類の対応関係を卵母細胞・植物を用いた実験により見出していく予定である。
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