生物が生産する有機化合物(天然物)は、構造が複雑であり、医農薬・香料・機能性食品素材などとして人間生活に広く利用されてきた。天然物の需要は増す一方だが、近年その発見数は減少してきている。しかし、申請者は「新規有用天然物は数多く存在し、人類が見逃しているターゲットが存在する」と考えている。本研究では、「天然物探索が行われていない寄生虫」に焦点を当て、「多様な未発見天然物群」を導き、ユニークな生合成経路を発見する。その生合成経路を利用し、有用天然物を大量に酵素合成し、生理活性を見出す。これらにより寄生虫から有用天然物を見出すスキームを創造し、「寄生虫天然物化学創出」への足掛かりを提示することを目的に研究を遂行した。 寄生虫由来新規天然物探索のため8種類(スナメリを宿主としたPharurus sunameri、コマッコウを宿主としたAnisakis属、オガワコマッコウを宿主としたNasitrema gondo、タイヘイヨウアカボウモドキを宿主としたAnisakis属、カズハゴンドウを宿主としたStenurus globicepholoe、ツチクジラを宿主としたOschmarinella sp.、カズハゴンドウを宿主としたAnisakis属、クロマグロを宿主としたEurphorus brochypterus)のサンプルの分析を行った。Pharurus sunameriにおいて新規化合物であると予測される天然物を見出すことに成功した。新規化合物を単離構造決定するために大量のPharurus sunameriを収集し、解析を行ったが、寄生虫のサンプルごとに再現性を取ることができなかったため構造決定まで至らなかった。
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