研究課題
本年度は、C57BL6マウスから作製した小腸上皮組織の3次元ex vivo培養系であるenteroid(エンテロイド)の内腔にマイクロインジェクション法を併用することによって、引き続き漢方によるPaneth細胞からの顆粒分泌誘導活性を、共焦点レーザー顕微鏡のtime-lapse観察によるハイスループットな評価系を用いて解析し、顆粒分泌誘導活性を有する漢方を特定した。また、それらの漢方を構成する生薬レベルにおいて、マイクロインジェクションを行って同様に評価し、Paneth細胞顆粒分泌誘導活性を有する生薬をさらに同定した。さらに、定量した顆粒分泌誘導活性の強さを基にして、物性や適性および、これまでに知られている効能等を考慮して候補となる素材を決定し、マウス経口投与in vivo試験を行った。投与マウスの糞便中αディフェンシン量を測定することで、Paneth細胞からのαディフェンシン分泌を検証するとともに、腸内細菌解析等を行って腸内環境に影響する素材を得た。Paneth細胞αディフェンシンは、選択的殺菌活性を持ち病原菌に強い殺菌活性を示す一方で、共生菌はほとんど殺菌しないことが知られており、自然免疫のみならず腸内細菌叢の制御において重要な役割を担っている。したがって、本研究で明らかにした漢方、生薬がPaneth細胞からのαディフェンシン分泌を誘導することは、それらがPaneth細胞を介して腸内細菌叢にはたらきかけることによって腸内環境を適切に制御する可能性を示している。本研究は、これまで知られていなかった新しい効能発現メカニズムを証明したことで、漢方、生薬による腸内環境改善と健康維持の理解に貢献する。
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GeroScience
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10.1007/s11357-021-00398-y